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「ずっと立っとけ!」中日“あの伝説的エース”に星野仙一が激怒した日…震えた“落合博満の監督就任”「ボク、落合さんを骨折させてるんです」
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岡野誠Makoto Okano
photograph bySankei Shimbun
posted2025/01/30 11:02

中日監督・星野仙一のもとで1億円プレーヤーになった野口茂樹
「ベンチに帰ると、『ずっと立っとけ!』と言われたので、バットケースの横で直立不動ですよ。振り返ると、監督がいる。だから、試合終了まで前だけを見ていました。日本ハムの選手たちも『何が起こったの?』という顔で、凝視してましたね。中村(武志)さんは『お前はバケツ持って立ってた』と今でも会うたびに言うんですけど、バケツは持ってません」
星野監督の〈あれでこたえんかったら、あの子もこれで終わりだな〉(※2)という檄に奮起した野口は立ち直って、開幕ローテーションに滑り込む。だが、先発4試合で防御率5.60と結果を残せず、中継ぎに降格。ガルベスと山﨑武司の乱闘のあった5月1日の巨人戦でも、先頭打者への四球を皮切りに失点を重ねた。試合が終わると、担当スカウトでもあった早川実投手コーチが“丸刈り指令”を下した。
「星野さんの逆鱗に触れないために先手を打とうと考えたんじゃないですか。監督室に行ったら、『何やってんだ』と笑ってました。コールズだったか、パウエルだったか、外国人も爆笑してましたね」
「100万円を…」“伝説のノーノー”裏側
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7月に一軍復帰すると、再びローテーション入り。前半戦最後の巨人戦では5回途中まで1失点に抑え、〈きょうは良かったな。あんな野口は初めて見たよ。ラストじゃなければ続投だよ〉(※3)と星野監督を喜ばせた。そして、8月11日の巨人戦では初回、3回、6回と2四球ずつ出しながらも、ノーヒットノーランを達成した。
「7回くらいから大豊(泰昭)さんがザワザワし始めましたね。東京遠征に行くと、いつも赤坂プリンホテルで一緒に昼飯を食べていたんですよ。『勝ったらケーキ買ったるわ』なんて言われながらね。この日、2本もホームランを打ってくれました。だから、『今日は俺が主役だ。(テレビに)たくさん映ってるだろ』と言ってましたけど(笑)。センターの大西(崇之)さんが2つもファインプレーしてくれた。あれも大きかったですね」
星野監督は試合中〈お前の四球には、もう慣れている。いつも通り自分のピッチングをすればいい〉と励まし、偉業達成の野口の頭を撫でて出迎え、〈どエライことやったもんだな〉(※4)と称えた。
「監督賞で100万円もらいました。たぶん、1試合の最高額だと思います。星野さんの時は高かったですね。当然、罰金もありました。ピッチャーだと『外国人に初球を打たれる』『2アウトからの四球』『先頭打者への四球』『バント失敗』などです。金額は人や回数によって違いますけど、10万とか20万です。門倉(健)さんがナイターの横浜スタジアムで失敗して、試合中に名古屋に帰らされて、朝までずっとバント練習をした日もあった。別に、罰金はプレッシャーにならないですよ。怒られるより全然いい」