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「ずっと立っとけ!」中日“あの伝説的エース”に星野仙一が激怒した日…震えた“落合博満の監督就任”「ボク、落合さんを骨折させてるんです」 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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photograph bySankei Shimbun

posted2025/01/30 11:02

「ずっと立っとけ!」中日“あの伝説的エース”に星野仙一が激怒した日…震えた“落合博満の監督就任”「ボク、落合さんを骨折させてるんです」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

中日監督・星野仙一のもとで1億円プレーヤーになった野口茂樹

「ビンタされても起用されているうちが華」

 潜在能力を見せつけた後も、野口は安定感に欠けた。翌年は左肩を故障。後半戦に復帰するも、1つも勝てなかった。誰もが唸る速球を持っているのに、開花に至らない。星野は歯痒さを抑えきれなくなった。

「東京ドームの巨人戦でノックアウトされた後、ロッカールームでビンタされました。代打の準備で来ていた愛甲(猛)さんがバットを持ったまま固まっていました(笑)」

 絶対に許されない行為であるが、星野監督の暴力は美化されていた。当の選手はどんな心境だったのか。

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「まあ、そういう時代ですよね。唇から血は出ましたけど、全然大丈夫ですよ。何もされずに使ってもらえないより、ビンタされても起用されるうちが華ですよ。星野さんは巨人に闘志を燃やしていたから、逆鱗に触れたんでしょうね。鉄拳制裁はこの1回だけです」

「僕ね、落合さんを骨折させてるんですよね」」

 6年目の98年、転機が訪れる。西武で工藤公康、巨人で桑田真澄などの才能を引き出した“8時半の男”宮田征典が投手コーチに就任。すると、“ミスター・フォアボール”と陰口を叩かれた左腕の制球力は格段に向上した。

「初めて会った時、『ボールに力があるんだから、とりあえず低めに投げとけばいい。アバウトでいいんだ』と言われました。それまでは四隅に細かく放ろうとしていた。教え方がシンプルで、飲み込みやすかった」

 制球力の安定した野口はリーグ4位タイの14勝を挙げ、最優秀防御率を獲得。翌年には19勝でチームを優勝に導く。中日の投手では杉下茂、郭源治に続く3人目のMVPに輝き、オフには1億円プレイヤーとなった。

「祝勝会では、監督に思い切りビールをかけました。もう無礼講ですから(笑)。僕には運があった。星野さんや宮田さんに巡り合えたお陰で、タイトルまで獲らせてもらった。もし生まれた年が少しでもズレたり、中日以外の球団だったりしたら、全く違う野球人生だったと思います」 

 01年オフに星野仙一が山田久志に指揮官の座を禅譲するも、結果を残せず、03年オフに落合博満監督が誕生。どう感じたか聞くと、野口は険しい表情で「結構ね、厳しいですよね」と呟いた。それは一体、どんな意味なのか。

「僕ね、落合さんを骨折させてるんですよね」

「落合への故意四球」ともささやかれた、あの事件について野口が口を開いた――。

〈つづく〉

#2に続く
「落合博満を引退させた」と言われて…死球は“わざと”だったのか? 本人明かす真相…8年後、その落合が中日監督就任「トレード通告いつ来るかな」
この連載の一覧を見る(#1〜3)

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