将棋PRESSBACK NUMBER

西山朋佳“初の女性棋士”不合格「じつは関西重鎮一門の系譜が…」元A級棋士が思う棋士編入試験の問題点「試験官も戸惑う非公式戦だけに」 

text by

田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

PROFILE

photograph byKeiji Ishikawa

posted2025/01/29 06:00

西山朋佳“初の女性棋士”不合格「じつは関西重鎮一門の系譜が…」元A級棋士が思う棋士編入試験の問題点「試験官も戸惑う非公式戦だけに」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

棋士編入試験を2勝3敗で終えた西山朋佳女流三冠

 【第3局】11月8日・上野裕寿四段(21)戦

 大阪・関西将棋会館。西山は後手番。西山の四間飛車に上野は銀冠の囲い。中盤では西山が良さそうに見えたが、上野は飛車を切って角を活用する手段で有利になった。西山は終盤で猛追したがかわされ、上野の厳しい寄せに敗れた。西山は終局後に「相手の角を活用させた応手が悪かった」と語った。

 【第4局】12月17日・宮嶋健太四段(25)戦

ADVERTISEMENT

 大阪・関西将棋会館。西山は先手番。西山の三間飛車に宮嶋は斜め棒銀の急戦。西山は宮嶋の1筋端攻めを丁寧に受けると、飛車と馬を駆使して敵陣に迫った。終盤の部分図の第1図での▲2四金が寄せの決め手となり、まもなく西山が勝った。編入試験は2勝2敗となり、棋士への道を最終の第5局に持ち込んだ。
 

最終局の相手・柵木は奨励会入会と三段リーグで同期だった

 西山は正月3日に千駄ヶ谷の鳩森八幡神社に詣でておみくじを引くと「勝負、時を待てば好機が到来」の文言が書かれていた。それを胸に抱き「勝っても負けても最後。悔いがないように挑みたい」という思いで大一番に臨んだ。

 棋士編入試験第5局は1月22日、新設された大阪府高槻市の関西将棋会館で行われた。西山女流三冠の対戦相手は柵木幹太四段。タイトル戦の最終局では振り駒で手番を改めて決めるが、編入試験では第1局での振り駒で決まっていて第5局で西山は後手番。西山と柵木は、奨励会(棋士養成機関)入会と三段リーグ参加が同期という関係があった。

 柵木は2009年9月、増田裕司七段の門下で関西奨励会に6級で入会。西山は10年3月、伊藤博文七段の門下で研修会ルートで同じく6級で入会。そして両者は第59回三段リーグ(16年4月~9月)に初参加した。同期の藤井聡太三段は13勝5敗の成績で1位となり、最年少記録の14歳2カ月で四段に昇段して棋士になった。西山は10勝8敗、柵木は4勝14敗だった。

 その後、西山は21年3月に年齢制限規定の前に奨励会を退会し、4月に女流棋士三段となった。柵木は23年4月に三段リーグ・次点2回によって四段に昇段し、現在はフリークラスに編入されている。

明暗を分けた“双方の飛車の利き”

 西山と柵木は二段以前はいい勝負だったが、三段リーグでは柵木の5戦全勝。ただ柵木の話によると、三段時代はもつれた戦いの末に運よく勝った将棋が多く、西山に相性がいいとは思っていないという。

 西山は棋士編入試験で、武器とする振り飛車を続けて用いた。第5局は西山の三間飛車に柵木は銀冠に組んだ。中盤で柵木が積極的に動くと西山は応戦した。

【次ページ】 「編入試験に臨んだ半年間は充実した…」と笑顔も

BACK 1 2 3 NEXT
#西山朋佳
#柵木幹太
#高橋佑二郎
#山川泰熙
#上野裕寿
#宮嶋健太

ゲームの前後の記事

ページトップ