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「初の女性棋士ならず」で埋もれるのは惜しすぎる…観戦棋士が見た西山朋佳vs柵木幹太の舞台裏「しびれた。手が伸びてるね」「妹弟子も棋士室に」

posted2025/02/01 06:00

 
「初の女性棋士ならず」で埋もれるのは惜しすぎる…観戦棋士が見た西山朋佳vs柵木幹太の舞台裏「しびれた。手が伸びてるね」「妹弟子も棋士室に」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

棋士編入試験第5局での西山朋佳女流三冠。棋士が見た「初の女性棋士ならず」で埋もれるには惜しい舞台裏とは

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勝又清和

勝又清和Kiyokazu Katsumata

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Keiji Ishikawa

西山朋佳女流三冠(29歳)が挑んだ棋士編入試験は、2勝3敗で決着した。「初の女性棋士ならず」の言葉でまとめられがちだが……西山を筆頭に、試験官として全力を尽くした26歳の柵木(ませぎ)幹太四段ら棋士の熱量は凄まじいものだった。現場を訪れた「教授」こと勝又清和七段が舞台裏を記す。〈NumberWebノンフィクション/全2回の1回目。棋士の肩書は基本、初出以外は省略〉

多くの棋士は西山をすでに「棋士」と見ている

「相手にとって重要な一局ほど全力を尽くすべき」(米長邦雄永世棋聖)

「米長先生の言葉は将棋界の要であり礎でもあります」(羽生善治九段)

「試験官の棋士には本当に人生を懸けて戦ってほしいです。負けたら全てを失うぐらいの覚悟で挑まないのであれば、棋士になった意味がなかったのではないかと思います。西山さんにとっては人生が懸かった対局ですので、真剣に一生懸命ぶつかってきます。棋士側はそれを全身全霊で受け止めて、100%以上のパフォーマンスを出すつもりで臨んでほしいです」(永瀬拓矢九段/将棋世界2024年11月号)

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 絶妙な振り飛車のさばき、ハンマーを振り回すかのような破壊力のある攻め、終盤戦での正確な速度計算。人呼んで豪腕。「西山将棋はおもしろい」と何人の棋士・女流棋士から聞いただろうか。

 西山朋佳はすでに「棋士」である。多くの棋士はそう見ている。

 私は棋聖戦予選で、西山の観戦記者を何局か務めたが、対局相手は誰もが西山を「棋士」として見ていた。森下卓九段は、足の状態が良くないのにもかかわらず、終局まで正座を崩さなかった。はっきりした声で「負けました」と頭を下げ、西山さんは強かったですと強さを認めた。高橋道雄九段もまた全力で戦い、はっきりと負けましたと頭を下げた。そして感想戦を楽しそうに行い、最後に「西山さんはタイトルホルダーなんだから本当は上座に座るべきだよね」と言って西山をあわてさせた。

試験官・柵木の鬼気迫る表情と“優しい素顔”

 その西山朋佳女流三冠が、名実ともに棋士になるための大勝負を戦う。

 棋士編入試験は、棋士番号の若い新四段5名が試験官となり受験者と対局を行う。受験者の3勝で合格。西山は2024年9月から1カ月ごとに対局し、2勝2敗で年を越した。そして成否の決まる最終局、柵木幹太四段との第5局が2025年1月22日、大阪府高槻市の新関西将棋会館で行われた。

【次ページ】 「しびれたね。柵木くん、手が伸びているね」

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