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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
青学大ランナー“10年間の進路”「箱根駅伝で燃え尽きる」説は本当なのか? 原晋監督「実業団の監督はつまらない」批判に見る“陸上界のトレンド”
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2025/01/22 11:05
過去11年で8度の箱根駅伝優勝を誇る青学大の原晋監督。2025年の箱根後には、実業団の指導者に向けて厳しいコメントを残した
そもそも駅伝と個人種目は別モノだ。
箱根は短期決戦の団体戦で、個人種目はリーグ戦に近い。1年を通して戦うため、いい時もあれば悪い時もあり、故障などのアクシデントも付きまとう。当然、環境の向き・不向きや成長の度合いには個人差があるので、実業団で開花する選手もいれば、記録を伸ばせないまま終わってしまう選手もいる。
陸上に限らず、どの競技でもその難しさは変わらないだろう。野球を例に取ると、ドラフト1位で入団しても数年でキャリアを終える選手もいれば、ドラフト下位から努力してトップレベルに到達し、メジャーに挑戦していく選手もいる。箱根から世界へと通じる選手を輩出できていないのは「青学大OBだから」という話ではなく、実業団も含めて日本の陸上界全体で背負っていくべき課題だろう。
原晋監督の“苦言”をどう受け止めるべきか
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折しも今年の箱根駅伝優勝後、青学大の原晋監督は「実業団の監督はつまらない。ポリシーを持って育成するという意識がない。本当に日本長距離界で金メダルを取らせたいという熱量の高い指導者がゼロ。サラリーマン指導者になっている。思いを持って指導にあたっていない」と実業団指導者の意識の低さを厳しく指摘した。
4年間で大学トップクラス、実業団でも活躍できるレベルの選手を育成し、送り出す“出口管理”をしている原監督からすれば、バトンを渡した後は選手自身はもちろん、実業団の一部の指導者にも責任がある、と考えるのは自然なことなのかもしれない。
例えば、実業団の練習には、大学ほどのきめ細かさはあるのだろうか。青学大の練習量は距離も含めて大学トップクラスだが、そこで伸びてきた選手が実業団に入ると、「質重視の練習だけだとどうしても物足りない」といったケースが出てきてしまう。その環境に慣れていくと大学時代よりも練習量が減り、結果的に走力が向上せず伸び悩みにつながる。吉田祐也や下田裕太は、練習の量や刺激などより良い環境を求め、青学大を練習の拠点としている。