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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝「四つ巴のシード権争い」相手選手から“まさかの声かけ”「2人でシードまで一緒に行こう」…東国大アンカーが語った“史上最激戦”全内幕
posted2025/01/22 17:02
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
Kiichi Matsumoto
「2人でシードまで、一緒に行こう」
東国大の大村良紀(3年)は、並走する順大の古川達也(2年)からそう声をかけられた。
舞台は101回目の箱根駅伝。最終区間の10区序盤でのことだ。
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この時、11位でタスキを受けた大村は、スタートから3km弱の時点で、中継点では20秒ほど前を行っていた古川に追いついたところだった。
最終10区での「シード権争い」
箱根駅伝において、10位と11位には「シード権」という名の明確な線が引かれる。その意味で、実はこの時の2人はまさにその分水嶺にいたことになる。
ところが当時、大村は自身の順位を正確に把握できていなかった。
「走り出す前のアップ中に聞いていたのは、『シード権まで40~50秒差』という話だけだったんです。でも、9区の菅野(裕二郎・3年)が最後に頑張って前とかなり差を詰めてくれたようで。しかも、中継所の直前で前にいた日体大も抜いてきてくれていた。そのせいもあって、順位とタイム差がよくわからないままのスタートになっていたんです」
とりあえずは、シード権の圏外であることは間違いない。
いまのところ、前には3校の背中は見えている。おそらく、このあたりがシード権争いになるのだろう――。それが、スタート時点で大村の頭にあった情報のすべてだった。
実際に10区開始時点での順位は8位に東洋大、そこから5秒遅れの9位に帝京大、さらにそこから6秒遅れて10位の順大の順番。大村は、その順大から21秒遅れでスタートしていた。
そこで冒頭の提案である。さて、どうするか。誘いに乗って、2人で前を追うべきか。ハイペースで追いついた勢いそのままに、1人で突っ走るべきなのか。大村は一瞬、逡巡した。