箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「序盤→坂→下りで使う筋肉を切り替える」青学大・若林宏樹が明かす箱根駅伝“山の極意”…肉体もフォームも山専用に鍛えた「覚悟」とは
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJMPA
posted2025/01/17 11:00
101回箱根駅伝5区、先行する中央大をとらえて抜き去る青学大・若林宏樹。その大腿四頭筋、腕の振りのフォーム、山への覚悟すべてを語った
「下りは3キロ弱ぐらいしかないので、どれだけ早く切り替えられるのかがすごく重要です。例えば1キロを過ぎてやっとスピードに乗るのと200mでスピードに乗るのとでは、800m違うので20秒ぐらい差が付きます。そのため、切り替えのトレーニングや筋肉の使い方など、イメージトレーニングを日々の練習の中でやっていました」
さらにフォームも調整して、軸をブラさずに肋骨を回旋させ、手でスウィングするようにした。平地では肘をうしろに引くように腕を振るが、若林は平地では見られない山上りのための独特のフォームを身につけていたのだ。
トラックの結果を諦めて山専門に
しかしそのフォームでは、トラックで結果を出すのはなかなか難しい。青学大は走力が高い選手が多く、そのなかにいると自分もトラックで結果を出したいと思ってしまいそうだ。
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「トラックで何回も自己ベストを更新して、モチベーションを高めていくのは、アスリートとしては当たり前だと思うんです。でも、自分の目標はトラックではなく、1年に1回しかない箱根駅伝の5区を走り、自己ベストを更新すること。そのためには1年間通して取り組んでいかないとできないんです」
チームで勝つために覚悟が決まった
そこまで結果を出したいと思い、山に専心したのは、どんな理由があったのだろうか。
「箱根駅伝でチームとして勝ちたかったからです」
若林は、凜とした表情でそう言った。
「1年目、優勝してすごくうれしかったですし、4年生の先輩が喜ぶ顔を見て、優勝っていいなぁって思いました。でも、2年目、期待されたのに自分が出られずに負けてしまったんです。もう1回、優勝したい。そのためには、より自分がやらなきゃっていう気持ちになりました。
そこで自分が山を走るんだという覚悟が決まった感がありました。覚悟があれば必然的にやるべきことも見えてきますし、自分が勝たせるんだというチームへの思いもより強くなります。今回でいえば、自分ら4年生が笑顔で終わりたいという気持ちで1年間、練習に取り組んでいました」