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青学大“若乃神”に敗れ「山はもう勘弁です」箱根駅伝5区の明暗を分けた“平地走力の罠”…駒大・山川拓馬ら“山の強者”はなぜ失速したか?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2025/01/11 17:02
駒澤大・山川拓馬ら、山の強者たちはなぜ実力を発揮できなかったのか。その深層を探った
平地の走り方が山には合わない
レース後吉田は、複雑な表情を浮かべて、こう言った。
「やっぱり山の神になりたかったですし、そのために5区の練習をずっとしてきました。ただ、創価大に転校し、環境が変わったことで、平地の走力が抜群についたんです。特にロードでは自信を持って走れるようになりましたし、出雲、全日本でも結果を出すことができました。
でもその分、山の走力が頑張ってもなかなか伸びてこなかったんです。平地での走り方が山には合わないのかなと思いました。そこで監督と相談して、自分の走力を活かすために2区ということで話が落ち着きました」
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最初は、この吉田の話がもう一つ飲み込めなかった。
シンプルに考えれば、走力が上がったのなら、いくら坂がメインの特殊区間とはいえ、少なくとも以前よりは速く上れるようになるはずだ。2代目・山の神の柏原竜二も「山を速く駆け上がるためには、5区にこだわるのをやめて、平地での走力を付けることが結果的に山を速く上れることに繋がる」と語っていたことがある。城西大の櫛部静二監督も山本に同じことを伝え、平地での走力を高める練習メニューを組んで、山本の2年連続の5区区間新に繋げた。
「神」候補・山川拓馬の証言
だが、吉田と同じように、平地の走力が増しても山に繋げられなかったと証言した選手がいた。
前評判が非常に高かった駒澤大の山川だ。
「自分は平地を走れていたので、ある程度その感覚でいけば、山も上れるだろうと思っていました。もちろん山なので、走り方とか使う筋肉が変わってきたりするところがあるので、油断しないようにしていたんです。でも、いざ上ると手が攣ってしまったこともあるんですが、身体が思うように動かなくて……。1年の時よりも力がないなぁ、山は難しいなと改めて思いました」
山川が感じた難しさとはどういうことだったのだろうか。