日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザックが次に目論む新たな策とは?
4-2-3-1以外の可能性を探る。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/02/08 10:30
優勝後、トロフィーを掲げる監督とキャプテン。アジアカップの練習では、長谷部と遠藤へは特に多く声をかけ、相談していたというザッケローニ監督
最重要視された遠藤、長谷部のダブルボランチ。
カギを握るのは攻守にわたって心臓部となるボランチである。
ザッケローニは遠藤保仁と長谷部誠のコンビを固定し、戦術的な意味合いで2人を交代させたことはない。それほど遠藤、長谷部の2人を重視している。
2戦目のシリア戦以降、攻撃の中心を遠藤に置くという共通認識がチームに生まれていて、遠藤にボールを供給することでチャンスをつくろうとした。これに伴って相棒の長谷部はバランスを見ながら遠藤よりも守の意識を強めていたように思う。前への推進力という攻撃の持ち味を抑えてまで、バランスを気にしてプレーしていた。
遠藤、長谷部のダブルボランチが呼吸を合わせて機能していたからこそ、優勝を果たすことができたと言える。しかしながらこの2人の特徴はやはり攻撃性にある。2人が守備に追われてしまうと、どうしても攻撃の流れが悪くなってしまう。
「アンカー今野」のトリプルボランチが4-2-3-1の弱点を補う。
南アフリカW杯に出場した韓国、オーストラリアとの戦いでは、最終ラインの前のスペースを相手によく使われていた。
韓国戦は前半こそ日本が主導権を握ったものの、相手が運動量を上げた後半に入ると韓国ペースが続いた。全体が縦に間延びし、セカンドボールを拾われてシュートまで持ち込まれる場面が増えた。遠藤と長谷部が守備に追われていたために状況を変えることが難しく、ザッケローニは遠藤をアンカーに下げて、その前に長谷部と投入した細貝萌を並べるトリプルボランチに変更した。中盤を厚くすることによって打開を図ろうとしたわけである。
オーストラリア戦も似たような状況にあった。前半、空中戦で押し込まれてセカンドボールを拾われて何度もチャンスをつくられてしまい、後半5分、指揮官は当初、岩政大樹を入れて、センターバックの今野泰幸をアンカーに上げようとした。長谷部と遠藤の守備の負担を減らして攻撃に目を向かせることで、相手の勢いを押し返そうとしたのだ。
結果的には右ひざを痛めていた今野がアンカー起用に自ら「×印」を出したため、指揮官は考えた挙句、左サイドバックに今野、左MFに長友佑都を上げるという“セカンドプラン”を選択することになる。
「今野はボール奪取能力に長けている。アンカーに入れたらきっと大きな貢献をすることになると、私は思っていた」