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全国高校サッカー選手権のウラで「高卒と大卒、どちらでプロを目指すか問題」危惧と利点「18歳で即戦力は至難の業。進学はロジカルだが…」 

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阿部博一/小野ヒデコ

阿部博一/小野ヒデコHirokazu Abe/Hideko Ono

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posted2024/12/28 17:01

全国高校サッカー選手権のウラで「高卒と大卒、どちらでプロを目指すか問題」危惧と利点「18歳で即戦力は至難の業。進学はロジカルだが…」<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

年末年始の恒例、全国高校サッカー選手権。大会後に待つ「進路」についてデータから考えてみる

 これを反映するかのように、カタールW杯(2022)の日本代表では、選出された26名中9名が大卒選手となっており、日本が初出場したフランスW杯(1998)の11名に次ぐ多さです。

 また、高卒でギリギリの実力でプロになった場合、入団直後の18歳以降に出場機会がなくなり伸び悩むという「18歳問題」があり、これも大学進学によって回避することができます。

久保も16歳時にはJ1で9試合出場だった

 Jリーグ、特にJ1のレベルは非常に高いです。どのぐらいレベルが高いかの理解を深めるために、日本代表のデータを見てみましょう。

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 カタールW杯(2022)では、日本代表の17名が高卒でプロになった選手でした。彼らのプロサッカー初年度の出場試合数の平均を見てみると、意外にも6.8試合にとどまっています。〈※正式にチームとプロ契約を結んだ年を初年度とカウント。プロ契約をしなくてもJリーグの試合に出場することができる「特別指定」「第2種登録(高校生カテゴリー)」での期間は除く〉

 例えば、逸材として知られる久保健英選手ですが、2017年11月に16歳でFC東京でデビューし、2018年に迎えたプロとしての本格的なシーズンでは、リーグ戦9試合出場(FC東京で4試合、期限付き移籍先の横浜F・マリノスで5試合)にとどまっています。フィールドプレーヤーでプロ初年度の試合出場数がいちばん多いのは遠藤航選手の34試合ですが、当時湘南ベルマーレはJ2リーグでした。

 また、GKに関しては川島永嗣選手、権田修一選手が高卒プロですが、1年目のリーグ戦出場は0試合です。これはGKというポジションが固定的であり、かつ、年齢が上がってフィジカル要素が落ちても経験値がプレーの質を補完できるという、ポジションの特異性にもよると思います。いかにフィジカルやGKスキルの優れる高卒プロでも、プロ10年級のGKからいきなりポジションを奪うのは至難の業です。

 このように、日本代表レベルの資質を持つ選手でも、高卒プロで即戦力となるのは難しい現実があります。

大卒プロとピークパフォーマンスの問題

 高卒でプロになることにリスクがある一方で、大卒プロが増えるという傾向は、一部のサッカー関係者が危惧する現象でもあります。

【次ページ】 「高卒か大卒か」には答えがないからこそ

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