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「グッドマンは泣いて出場を訴えた」井上尚弥はなぜ“1カ月延期”を受け入れたのか? 試合10日前に異例の決断「代役を立てる可能性もあったが…」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/17 17:56

12月24日に向けて調整を続けていた井上尚弥(31歳)。アクシデントにも動じず、負傷したグッドマンを気遣うコメントをSNSに投稿している
もちろん、さまざまな意味でのダメージがないわけではない。あくまで個人的な思いだが、井上の“2024年は1年3戦”というプランが霧散したのは残念だった。
現代のトップボクサーは年に1〜2試合をこなすことが常とされ、リング誌のパウンド・フォー・パウンドでトップ10に入る選手でも今年3戦を行ってきたのは中谷潤人のみ。そんな時代において井上、中谷が2024年をどちらも3勝3KOで終えていれば、日本ボクシングの“黄金期”を誇示するまた新たな材料となっていた。1カ月の延期で年が変わり、そのチャンスが失われたのはやはり口惜しくはある。
また、さらに重要な要素として、10日後に向けたピーキングを行っていた選手たちのコンディションが少々懸念されるところではある。上記通り、メインイベントだけに限らず、出場選手は一度ペースを落とした上でまた上げていかなければならない。
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「楽しみにしてくれていた方々には申し訳ないです。 また新日程で足を運んで頂ければ嬉しいです!!! お互い最高の状態で闘おう」
延期決定後、SNS上でそんなメッセージを残したモンスター。王者が圧倒的優位と目された今戦で、大番狂わせの線が少しでも出てくるとすれば「何か不慮のアクシデントがあった時」という見方が一般的だった。直前の延期がそれに値するかはわからないが、31歳になった井上の調整とウェイトコントロールが注目される。
来春のラスベガス計画にも影響?
付け加えると、ここで次戦が1カ月でも先送りになったことで、井上の今後のスケジュールへの影響も気になるところだ。グッドマン戦を首尾よくクリアしたと仮定して、来年4月には久々の米リング登場となるラスベガス戦が計画されていたのはご存知の通り。準備期間を考えれば、海外戦の日程にもマイナーチェンジがあっても不思議はない。
ベガス戦の相手はWBC1位のアラン・ピカソ(メキシコ)が有力視される中、盛んに挑発を繰り返すWBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との兼ね合いでWBA王座をどうするのかも考慮せねばなるまい。それらも含め、ここ数日で未知数の要素が一気に増えた印象もある。
グッドマンの左目上のカットをきっかけに、モンスターはより慌ただしい時間を過ごすことを余儀なくされる。近未来は見極めづらくなり、余計に目が離せない日々が続きそうな予感も漂ってきている。
