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「グッドマンは泣いて出場を訴えた」井上尚弥はなぜ“1カ月延期”を受け入れたのか? 試合10日前に異例の決断「代役を立てる可能性もあったが…」
posted2024/12/17 17:56

12月24日に向けて調整を続けていた井上尚弥(31歳)。アクシデントにも動じず、負傷したグッドマンを気遣うコメントをSNSに投稿している
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杉浦大介Daisuke Sugiura
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JIJI PRESS
世界的にも珍しい“クリスマス・イブ決戦”は残念な形でたち消えになった。
IBF、WBOの指名挑戦者サム・グッドマン(オーストラリア)が練習中に左目上をカットしたため、12月24日に王者・井上尚弥(大橋)との間で争われる予定だった世界スーパーバンタム級4冠戦は延期が決定。このカードは改めて2025年1月24日に有明アリーナで挙行されることが14日、大橋ジムより発表された。
「(スパーリング中の)不慮の事故でカットし、4針縫った。自分としては試合を進めたかった。本当にショックで打ちのめされているが、仕方がない。会場に来るつもりだった皆さん、井上と彼のチームにも申し訳なく思っている。私は自分のチャンスを逃したくない。この男と戦いたい。このカットが治ったらすぐに試合ができて、この試合が実現することを願っている」
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グッドマンは自身のInstagramに投稿した動画内でそう説明したが、豪州時間で土曜朝に行われたスパーリングは文字通り、15日に来日する前の最後の実戦練習だったとのこと。これはもう不運としか言いようがない。

結果的にわずか1カ月の延期で済んだことから明らかな通り、傷自体は比較的小さなものだった。元世界王者で現在は解説者を務めるクリス・アルジェリは、「もっと早い時期に発生していたら報道もされない種類のカット。故障箇所と試合直前というタイミングが悪かった」と話していた。
グッドマンは涙ながらに出場を直訴
とはいえ、せっかくのクリスマス・イブという興行枠、今後のスケジュールも考慮すれば、代役を立ててのイベント続行が考慮されても当然だっただろう。それを熟知した26歳のグッドマンは故障発生直後、“人生最大のチャンス”を逃すことを恐れて涙ながらに強行出場を直訴したという。
しかし――陣営はそれを許さなかった。グッドマンを直々に説得したというマネージャー、ピート・ミトレブスキー氏は延期に至った経緯をこう説明する。