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「グッドマンは泣いて出場を訴えた」井上尚弥はなぜ“1カ月延期”を受け入れたのか? 試合10日前に異例の決断「代役を立てる可能性もあったが…」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/17 17:56
12月24日に向けて調整を続けていた井上尚弥(31歳)。アクシデントにも動じず、負傷したグッドマンを気遣うコメントをSNSに投稿している
「サムは泣いて訴えたが、傷口がまたすぐに開いてしまう状態で戦わせるわけにはいかない。ビッグマネーを目当てに強行する挑戦者もいるのだろうが、“チーム・グッドマン”はそうではない。井上戦を行うのは大金を得るためではなく、勝つため。だから万全の状態で臨ませたいんだ」
10日後に迫った劇的なステージを保持するため、やはり代役挑戦者の採用は模索されたという。主催者側がそちらの方向に舵を切っていたら、依然として指名挑戦権を持っているとはいえ、グッドマンの挑戦の機会はしばらく先送りになっていたはずだ。結果的にグッドマン陣営の希望通りの“延期”に落ち着き、ミトレブスキー氏も胸を撫で下ろしていた。
「サムは少し取り乱していたが、今は落ち着いている。2週間後にはまたスパーリングを行い、準備を整えられる。こちらの熱意を汲み、延期という形にしてくれた大橋(秀行)会長とプロモーターを務める本田(明彦)会長に深いリスペクトを捧げたい」
「動画配信時代」の恩恵か
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ただ、この決定はグッドマンを気遣ってなされたものではもちろんあるまい。適切な代役の手配が難しかったのと同時に、井上陣営にはここで2つの世界王座統括団体の指名戦をクリアしておきたいという意思があったに違いない。世界戦が地上波テレビで放映されていた時代であれば日程を動かすのは至難だったはずだが、動画配信時代の現在はそれがよりフレキシブル。有明アリーナを来年1月下旬に利用できたことも大きく、1カ月後という短期スパンで延期に至った。
主催者の準備、努力のおかげで、状況を考えれば最善に近い形のリカバリーがなされたのだろう。

