「僕がディグして、石川がプッシュして、あと1点になった。そこでもう『勝ったっしょ』とちょっと思っちゃったんですよ。たぶん誰しも思ったんです、あそこで。それがよくなかったかなと。

　やっぱり25点取るまで気を抜けないなと、終わってみて感じました。ベンチも勝った雰囲気が出ていましたし、ベンチにいたメンバーも中に来ていたので。来ますよねそりゃ。ほんとに勝てると思いましたから。でも、勝負は終わるまでわからないと、本当に痛感しました」

　掴みかけた手からするりとこぼれ落ちたベスト4。

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　フルセットの末に敗れた瞬間は、「何も考えられなかった。『うわーオリンピック終わったー……』という感じ。“無”でしたね」

©︎Kaoru Watanabe/JMPA

　ただ涙だけがあふれてきた。一番肩を震わせて泣きじゃくったのは、フィリップ・ブラン監督と抱き合った時だった。

「人生を変えてもらった」と感謝する師に、山本が最後にかけられた言葉とは――。

（第2回につづく）