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“格下の高校生”だった井上尚弥に敗北「試合後、初めて泣きました」後の世界王者たちを撃破“アマ最強ボクサー”は高校教師に…柏崎刀翔の壮絶人生―2024下半期読まれた記事
text by
森合正範Masanori Moriai
photograph byNaoki Fukuda
posted2024/12/24 06:30
アマチュアボクシングのトップ戦線で長く活躍した柏崎刀翔。寺地拳四朗や京口紘人、重岡優大(写真右)をはじめ、のちの世界王者からも勝利を収めている
林田を破り“優勝候補”として全日本選手権へ
埼玉・草加でのインターハイは決勝でまたも原とぶつかった。出入りの速い原の右を浴び、ペースをつかめない。ポイントは7-18。完敗だった。ほとんどの大学が柏崎はプロに進むと思っていたらしく、誘いはなかった。唯一、日本大学から推薦で声がかかる。学費免除にもかかわらず、父は「大学のリーグ戦で負けたら、辞めてプロに行かせるからな」と理不尽な話をしてくる。日大ボクシング部の梅下新介監督が「絶対チャンピオンにしますから!」と頭を下げ、父を説得した。
日大に入った柏崎の前に、ライバルの原はいなかった。騎手を目指して競馬学校へ。ボクシング界から去っていた。
柏崎は1年生ながらインファイトと左フックを武器にリーグ戦で4戦全勝し、階級賞を手にした。初めて挑んだ全日本選手権では決勝でまたも駒大の林田に敗れた。柏崎の前にいるのはもう林田だけだ。2年になると、対戦4度目にして初めて林田に勝った。
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「梅下監督とずっと左フックの練習をしてきて、それが当たったんです。太郎さんにやっと勝てた。本当に嬉しかったですね」
林田という大きな山を越え、優勝候補として、全日本選手権を迎えることになった。そのとき、さらに大きな山がそびえ立っていることを、柏崎はまだ知らなかった。
<続く>