第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
〈東京国際大学〉2年間の回り道を経て強くなった佐藤榛紀(4年)が、最初で最後の箱根駅伝に懸ける思いとは
posted2024/12/13 10:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Yuki Suenaga
前回の箱根駅伝予選会はわずかに3秒タイムが及ばず、本選出場を逃した。
その悔しさを誰も忘れなかったことが、今回の箱根駅伝予選会8位突破につながったのだろう。
最強留学生のリチャード・エティーリ(2年)が腹痛に苦しみ、主将の楠木悠人(4年)が脱水症状により棄権となるアクシデントもある中、日本人としてチームトップ(全体31位)の走りで仲間を鼓舞したのが佐藤榛紀(4年)である。
11月の全日本大学駅伝でも、佐藤は3区を走って区間4位と好走。中村勇太監督代行も「暑さの中の予選会と主力が集まる全日本、しっかりと二本揃えたのはさすがでした」と高く評価する。今や押しも押されもしない東京国際大学の日本人エースだ。
不調に陥った2年間
しかし、ここに来るまでには回り道も多かった。
1年目こそ出雲駅伝のメンバーに抜擢され、チームの初優勝に貢献するなど存在感を示したが、2年目はケガに泣かされ、3年目は精神的に苦しんだ。恩師と慕う大志田秀次監督が突然退任し、練習に身が入らなくなったのだ。
当時を振り返る佐藤の表情は、今もどこか寂しげだ。
「この監督の元でやってみたい。本当に自分がこの4年間で成長するのに必要な監督だと思ってここに来たので、いなくなってからはなかなか練習に集中できず……。正直、落ち込みました」
変わるきっかけをくれたのは、寮の相部屋の先輩だった。いち早く気持ちを切り替えて努力している先輩の姿を見て、自身の至らなさを思い知った。「ここからまた成長できれば、それこそ大志田さんへの恩返しになるんじゃないか」と考え、前を向いたという。
3年生の冬に10000mの競技会で 28分13秒02の好タイムをマーク。今年2月にオマーンで開催された世界大学クロスカントリー選手権に日本代表として出場した。遠い異国の地で、城西大学の斎藤将也(3年)や青山学院大学の黒田朝日(3年)ら、各大学のエースたちと1週間寝食をともにした経験が、さらに佐藤を変えたようだ。
「みんな年下ですけど、それぞれの強い思いや、レースプランなんかも聞けて、本当に自分はまだまだなんだなって実感しました。2年生でケガがあって、注目されることも少なかったんですけど、やっぱり自分もエースと呼ばれる存在になりたい。どんな状況でも求められた結果を出すのがエースだと思っています」