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「自転車にヒョイとまたがって…“バーイ”」男子バレー新監督ロラン・ティリってどんな人? 親日家の60歳、選手も信頼「ティリさんは引き出しが多い」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2024/11/26 17:00
バレーボール男子日本代表の新監督に就任したロラン・ティリ。12月1日で61歳になる
試合に勝つために必要なものを全部で100とすると、サーブ、サーブレシーブ、トス、スパイク、ブロック、ブロックフォロー、ディグの7項目がそれぞれ14%ずつを占め、それをトータルすると98%になる。残りの2%は“運”。例えば相手のミスや審判の判定などを挙げるが、前述の7項目に全力を尽くしてハードワークし、日頃の行いを正すことで、2%の運を引き寄せることができる、と説く。
その7項目は、どれかが飛び抜けて良くても、他のどれかが低ければダメ。全項目をバランスよく完成させなければならない。
その必須の7項目の一つに“ブロックフォロー”が入っているところに、細かいプレーの精度を大事にするティリ監督らしさが表れている。まさにフランス代表はそれを体現しているチームであり、日本代表も、そうした精度の高さを求めてきた。そして今後さらに求めていかなければならない。
「ラスト10点はカウントダウンだ」
選手がよく口にするのは、「ティリさんは引き出しが多い」ということ。練習方法も技術的な指導も、その選手やチームにあったものを多くの引き出しの中から選択する。メンタル面のアドバイスも的確だという。
昨季まで3シーズン、パナソニックでプレーし、今季イタリア・セリエAのミラノに移籍した大塚達宣はこう語っていた。
「試合での25点の運び方についてもアドバイスをもらいました。ティリさんは『ラストの10点はカウントダウンだ』という話をよくしていました。25点までしっかり取り切れという意味だと思います。だから僕は16点を超えてからのほうがパス(サーブレシーブ)の集中力が上がったような気がします。18点、ハイ取った。19点、ハイ取った。とやっていって、残り3点、2点、1点、というふうに。
24点目だろうが、カウントダウンは残り“1”あるわけだから、その“1”をしっかり取り切らなきゃいけない。“0”になるまでしっかりと。そういうことはよく言われましたね」
そんなメンタリティが日本代表に浸透すれば、パリ五輪で超えられなかった“最後の1点”を、次は超えられるかもしれない。
ティリ氏は「日本代表チームの力、強さ、経験、その価値観や資質を信頼し、私ならではの価値、国際大会やオリンピックでの経験も取り入れていきたいと思います。新たな冒険の始まりが待ち遠しいです」と協会を通じてコメントした。
もちろん結果はまだ見えないが、選手たちが「オレたちはもっと強くなれる」と期待を持って集いたくなる監督であることは間違いないだろう。