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「自転車にヒョイとまたがって…“バーイ”」男子バレー新監督ロラン・ティリってどんな人? 親日家の60歳、選手も信頼「ティリさんは引き出しが多い」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2024/11/26 17:00
バレーボール男子日本代表の新監督に就任したロラン・ティリ。12月1日で61歳になる
「(リオ、東京で)2度オリンピックの出場権を獲った後で、パリに行くことよりも、ここ(日本)に来ることのほうが、私にとって特別で、重要なチャレンジだと思ったので、こちらを選びました」と語っていた。
熾烈な予選を勝ち抜いてリオと東京五輪の出場権をつかみ取ったチームに誇りを持っており、自国開催のため出場が約束されているパリ五輪には、それ以上の魅力を見出せなかったようだった。
何より、日本や新しい環境への挑戦に心をくすぐられた。
「私はチャレンジが大好きなんです。未知の文化や生活など、新しいものに触れることに惹かれる。それにバレーボールにおいて日本はとても重要な影響を及ぼしてきた歴史がある。だからここに来ることは私にとって非常にエキサイティングなチャレンジでした」
若い頃に新渡戸稲造の「武士道」を読み、日本バレーに対するリスペクトも深い親日家。それも踏まえてオファーしたと、大阪ブルテオンの南部正司ゼネラルマネージャーは語っていた。
「“監督”ではなく“家族”のようでいたい」
大阪での生活を気に入り、今ではすっかり馴染んでいる。パナソニックアリーナでのホームゲームを終えると、ヒョイと自転車にまたがり「バーイ」と軽快に帰っていく。来日してまもない頃、休日は自転車で近所を散策するのが楽しみだと話していたが、5年目になった今では1時間ほどかけて京都まで足を延ばすこともあるという。
選手には常にポジティブな言葉をかけ、親身になって寄り添う。
「私は選手にとって“監督”や“先生”であることは望みません。“家族”のようでいたい」がモットーだ。
五輪優勝監督という肩書きを持ちながら、気さくでユーモアがあり、誰に対しても和やかに接する人格者。選手に慕われ、今でも国際大会の視察に訪れると自然にフランス代表の選手たちがティリ氏のもとに集まり輪ができる。まるで本物の家族のように。
ただ選手に求めるものは徹底している。プレー面ではすべての要素を精度高く、全力で果たすことを求める。ティリ監督が大阪ブルテオンの選手たちに常々話すのは“勝つための7つの要素”だ。