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「もう負けられなくなっただけ」日本シリーズ3連敗ソフトバンクの誤算とは? 実は初戦から見えていた小久保監督「リリーフ起用の見極め」の綻び
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki
posted2024/11/02 17:07
初戦、第2戦の連勝で圧倒的優位かと思いきや、本拠地で3連敗と追い詰められたホークス・小久保監督
第5戦は先発した大関友久が立ち上がりから不安定なピッチング。3回表に筒香嘉智に先制適時打を浴びると、早くも継投策に入る。4回からは満を持してというべきか、前田純を投入。2日前に話していた起用が実現した。
ところが前田がここで打たれてしまう。2人の走者を貯めると、3番の牧秀悟に3点本塁打を浴びたのだ。監督が口にしていた選手起用の目論見がどうにも当たらない。
実は連勝中も不安定だったリリーフ陣
ソフトバンクがホーム3連戦で逆襲を許した背景には、このリリーフ陣の不調がある。初戦から第5戦まで、一度もDeNA打線を零封できていないのだ。勝ち試合でも得点を奪われたことが、尾を引いているように見える。
日本シリーズは短期決戦と言われるが、1試合、1試合の意味が大きく、一見大差の試合といえども、その影響を侮ることはできない。
このシリーズは、第1戦、第2戦とソフトバンクが連勝した。しかし、DeNAの先発投手を打ち崩した一方で、第1戦は9回裏に反撃を受けて3失点。第2戦は4回までに6得点でリードしたが、5回から猛追を受けて3-6でなんとか逃げ切ったという試合だった。
加えてDeNAのリリーフ陣からは逆に、その2試合で抑え込まれた。相手が継投に入って5回以降には、第1戦の9回に3得点したのみだったのだ。言い換えれば、後半勝負ではDeNAに分があるという状況が生まれていた。
そして、舞台を博多に移してからは形勢が逆転。DeNAの先発陣がゲームの流れを作ったのである。
連敗の反省を生かしたDeNAの試合運び
第3戦のDeNA先発は東克樹。初回にDeNAに先制されたものの、すぐさまその裏に相手の併殺ミスから近藤健介の適時打で1点を挙げた。しかしその後は東を攻略できず、セットアッパー伊勢大夢、クローザー森原康平に試合を締められた。第4戦の先発アンソニー・ケイには初回3者連続三振と圧倒され、そのまま最後まで無得点。第5戦の先発アンドレ・ジャクソンに対しても、前日の再現のように初回3者連続三振というスタートになり、打線は沈黙した。
DeNA側からすれば、ソフトバンクの打線を封じ込める一方で、チャンスを効率よく得点に繋げられている。オースティン、牧らの一発攻勢もあるし、繋いでランナーを貯めて長打というシーンもある。そしてリリーフに代わったのちに、さらに点差を広げていくという戦いぶり。第1戦、第2戦の反省が完璧に生かされた試合運びといっていいだろう。