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「もう負けられなくなっただけ」日本シリーズ3連敗ソフトバンクの誤算とは? 実は初戦から見えていた小久保監督「リリーフ起用の見極め」の綻び
posted2024/11/02 17:07
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Naoya Sanuki
悲しくも、指揮官の言葉が現実になってしまった。
「(日本シリーズは3敗できるという考え?)そう。何回も言っていること」
シリーズ初黒星となった3戦目の試合後。残りの2勝を目指しながらも、日本シリーズは3敗しても敗退ではないと強調したソフトバンクの小久保裕紀監督には、どこか余裕めいたものを感じた。メディアの前でそう見せているのか、12球団随一の分厚い戦力が彼に自信を持たせているのかは定かではなかったが、そうした振る舞いは3連敗を喫した第5戦の後も変わらなかった。
しかし、現実は厳しい。
というのも、小久保監督の勝算に向けての未来予測が、今のところことごとく外れているのである。
はまらない継投策
負けた日の試合後「短期決戦では敗因を振り返る意味がない」と語った小久保監督は、試合に関するネガティブな質問を受けつけようとしない。反省をしないのは個人の自由だが、試合の分析をするのが仕事である我々記者としては、必死にポジティブ要素を探して質問するしかない状況だ。
そうしたやり取りの中で、小久保監督はいくつか希望を挙げた。
第3戦の試合後はこんなふうだ。
「明日以降につながる試合だった。選手起用を見極めないといけないんで、前田純の使い道もここでは言いませんけど決まったし、尾形崇斗、(ダーウィンゾン・)ヘルナンデス、(ロベルト・)オスナは(今日は)出していない。勝てるゲームでつぎ込めばいいんでね」
そう話した小久保監督は続く第4戦、1点ビハインドの6回表に、好投していた石川柊太に代えて、その尾形をマウンドにあげた。勝っているなかでの継投ではなかったものの、2死一塁から打席に長打力のあるタイラー・オースティンを迎えていたため、先手を打つ采配だった。オースティンは三振。勝負どころの選択として決して悪いものではなかった。
しかし、このピンチを抑えた尾形に7回も続投を命ずると、これが裏目に出る。先頭の宮崎敏郎に左翼本塁打を浴びて1失点。さらに2つの安打と四球で満塁としてマウンドを降りたのだ。代わって登板した岩井俊介は桑原将志にフェンス直撃の2点適時打を許すなど、3点を失う。尾形には失点4がついた。