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高校で全国3冠→学生陸上界からドロップアウト…“元・天才少女”石塚晴子(27歳)が若い選手に伝えたいこと「自分のゴールをどこに置くかが大事」
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by(L)Shigeki Yamamoto、(R)AFLO
posted2024/10/13 11:03
高校時代から全国のトップを走り続けた石塚晴子。27歳になった今、かつてを振り返って感じる「ゴール地点の考え方」の重要性とは?
この年の女子MVPに選ばれ、最大の目標を最高の形で叶えた石塚。すると、世間は「未来の日本代表」として将来を期待するようになる。しかし、長年の目標を達成した彼女は、そこから先に続くものを具体的に思い描けなかったという。
「私はインターハイで優勝したいという気持ちだけで入学したので、その先のことはあまり考えていなかった。現役後半は口に出していましたが、あまりオリンピックに興味がなくて……(笑)。でも、取材では『これから世界選手権やオリンピックがあるけれどどう思うか』という質問を受ける機会がすごく増えて。メディアの質問や見出しから、自分に期待されている役割を感じていたのかもしれません」
外から求められるものに「自分が追いついていない感覚」
日本の高校生アスリートにとって、インターハイは唯一無二の夢舞台だ。その舞台で勝つことが世代トップの証でもあり、最大のモチベーション。学校対抗戦という側面も相まって、同じ汗を流した仲間との絆も感じられる青春の1ページでもある。
石塚もまた、そんな高校生アスリートの一人だった。高校に入学してからは、友人と遊びに行くこともなく、将来を考える間もないほど練習に打ち込み、文字通り「青春」をすべて捧げた。
「私は“インターハイ人間”だったので、そのことしか考えていなかった。インターハイが終わった後は、その先のことを落ち着いて考える間もなく次から次へと試合があって、日本代表に選ばれて……という感じで。周りのテンポが速く、外から与えられるものに自分の中身が追いついていないような感覚でした」
大きな夢や目標を達成した後に、同じ熱量で打ち込めるものがなくなり、虚無感を覚える人は少なくない。ましてやトップアスリートならなおさらだろう。
「インターハイ優勝という夢が叶って消えた後、自分の中で揺るぎない、強いエネルギーを出し続けることは難しかった」