インターハイの炎天下での過密日程や、選手の心身への大きな負担は将来に影響を及ぼしかねないと批判の声もある。インターハイだけを見据えて努力を重ねて、心身ともにバーンアウトする高校生も少なくない。インターハイは確かに価値ある舞台だが、選手のその先を見据えた指導や目標設定のあり方も考える必要があるだろう。

現在は「人事部で新卒採用を担当」

　2022年にトラックを離れた石塚は今、ローソンの人事部で新卒採用を担当。今年、キャリアコンサルタントの資格も取得し、まさに彼女が課題を感じている「キャリアの描き方」に直結する職場に身を置いている。

「将来的には自分の経験と新卒採用担当というスキルを生かして、アスリートのキャリアを支援する立場になりたいんです」

©Shigeki Yamamoto

　フォーマルな服装に身を包み、社会人としての目標を語る石塚。アスリートのキャリアの描き方について「自分のゴールをどこに置くのかというロードマップを持つことが必要」だと説く。

「そのゴールに対して、いつ頃から何をすべきなのかを考えながら競技に取り組むことで、自分の人生を俯瞰して見られるようになる。その中で自分に求められているものや、自分にできることをよく自覚することで、競技を引退しても、悪い意味での未練や後悔なく、自信を持って社会に出られるのではと思っています」

　トラックの上で過ごした13年間、激しい浮き沈みはあったが、決して蓋をしたい思い出にはなっていない。「自分にしか描けなかったキャリア」という納得感があるからこそ、石塚は軽やかに次のステップを踏み出している。