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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平「50-50」達成につぐ「二刀流復活」への“虎の穴修業”とは? 重さの違うボール、データ解析…ナゾ企業が授けた「ルーティーン」の秘密
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byGetty Images
posted2024/09/27 11:03
二刀流復活へいまでもドライブライン社の授けたルーティーンを続ける大谷選手。同社は「投手・大谷」復活の“虎の穴”となるのだろうか?
一方で、こういったデータ解析自体はもはや近年、珍しい取り組みではない。
トラックマンやラプソードといった機器はもはや野球ファンには浸透しているし、ドライブラインだけでなく、類似の企業でも同様の取り組みは行っている。もちろん、それらを活用して球団そのものも様々な数値を計測している。
それでも多くのメジャーリーガーや、NPB所属のプロ選手たちがいまも自費でドライブラインを訪れる。その理由を榎本氏はこんな風に考えている。
「データを取れたとして、『それをどうするか』という話なんですよね。ドライブラインはMLBをはじめ過去の選手の様々なデータがありますから、『自分のパワーがどのくらいの位置にあるのか』とか、『平均と比べてどのくらいなのか』といった比較ができるんです。それこそ大谷選手と比べることもできる。それをもとに選手のタイプや体格などで、個別にベストの解を出せる。メニューに関してもそういった過去の蓄積から提示できるのが大きいのだと思います」
WBCやMLB中継でも目にした「プライオボール」
例えば、WBCで大谷が試合前に色とりどりのボールを投げてウォーミングアップを行っていたシーンを見ていたファンも多いだろう。この「プライオボール」はドライブラインのひとつの特徴でもある。
重さ・大きさの異なるボールを、前だけでなく後ろに投げたり、足を最初から前に出したスタンスから投げたりと、さまざまなエクササイズが存在する。全身の可動域を広げ、肩肘の強化や球速アップにもつながるというが、ベースとなる目的はケガの予防だ。
「基本的にドライブラインの考え方はシンプル。投球なら投球、打撃なら打撃の動作を時系列的に分解し、それぞれの段階で問題があればそこを直すためのドリルを行う――ということです」
投球であれ打撃であれ、野球はそれぞれの身体の部位が連鎖する全身運動だ。
仮に何か良くすべきところがあったとしても、一部を矯正すると他の部位に悪影響が出るケースが多い。
「例えばピッチャーなら不調の時に『ヒジが下がっている』と分かっても、そこを意識して無理矢理ヒジを上げるとどこかに今度は違う負担がかかる。そうすると別の箇所を故障することになってしまう。一度崩れたフォームを直すのが難しいのにはそういう理由があるんです。それを防ぐには、投球動作の一部分を切り取って、そこに効果的な修正を加えればよいわけです」