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「国体」から「国スポ」へ…変わったのは名称だけでない? 佐賀県知事・山口祥義が語る“SAGA2024の挑戦”「日本のスポーツ界に一石を…」
posted2024/10/01 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
佐賀県
「日本のスポーツ界に一石を投じようという思いがありました」
佐賀県の山口祥義知事は言う。
知事が抱負をそう語るのは、「SAGA2024」(佐賀県)だ。2つの大会から成り、9月5日に一部の競技が始まった国民スポーツ大会(国スポ)は総合開会式を10月5日に控え、全国障害者スポーツ大会(全障スポ)は10月26日に開会式が行われる。
「国スポ」に名称変更…変わったのは?
昨年までは国民体育大会、略称「国体」として実施されていたが、今年から国民スポーツ大会、略称「国スポ」に名称が変更された。だが変わったのは名前だけではない。変化したところは多岐にわたる。
例えば、
*開会式では整列しての入場行進から自由な入場に
*都道府県対抗に加え、新記録、最高得点、MVPなど選手個人の活躍にスポットを当て、栄誉を称える表彰制度「The Good Player of SAGA2024」の創設
*全障スポにおいては選手に加え、陸上競技の伴走者やボッチャのランプオペレーターにもメダル授与
*スポーツクライミング、バレーボール成年女子などでのナイトゲーム実施
*オンライン配信を強化
といったものが挙げられる。
国体では都道府県で順位を争う団体戦の色が濃かったが、よりアスリートとアスリートをサポートする立場の人をクローズアップする傾向がうかがえる。
それとともに、夜間に試合を行うこと、配信強化等は大会を観戦しやすい環境を整えたと言える。
行政は前例を踏襲する方向に流れがちでスポーツイベントも例外ではないことを考えても、「新しい大会」と形容できるほどの大きな変化である。山口知事は言う。
「日本のスポーツ界はこれまで成功してきましたし、様々な感動を呼んできました。ただ、世界のスポーツ界とは乖離があるんじゃないかという問題意識を持ち続けてきました。日本のスポーツ界は根っこにあるのが『体育』で、教育という概念が強かったと思います。戦後、日本が厳しい状況から復興していく中で、まず体を鍛えていこう、体を資本に頑張っていこうという発想があったからですね。それも大切だと思いますけれども、世界では、スポーツシーンはみんなで楽しむものとしてある。スポーツというのは人の生き様だったり、魂を揺さぶるものだったり、明日への元気だったりするのではないでしょうか」
「試合ができず卒業するのは辛い」の声
それを形にしたのが「SAGA2024」ということになる。スポーツのあり方を変える試みがこの大会に限った話でないことは、近年、佐賀県がスポーツに力を入れてきたことに表れている。