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「乗っていないと言うこと聞かない」愛馬と“初老”タッグで奇跡のメダル…“初老ジャパン”大岩義明48歳は苦境でも「ロスにも挑みたい」
posted2024/09/01 11:04
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
AFLO
「グラフトンストリート」との出会いは今年2月。ドイツからイギリスへと再び拠点を移すなかで、トレーナーを依頼した馬術のメダリスト、ピッパ・ファネルさんの厩舎にいた馬だった。
「馬にとっては練習場所の移動もないし、トレーニングの環境を変える必要もない。僕もトレーナーのことはよく知っていたし、その馬のことも知っていたので、能力が高いことは分かっていました。だからあとは僕が乗りこなせるかどうか、信頼関係を築けるかどうかだけだと思っていました」
一度は閉ざされたパリへの道
実は「初老ジャパン」は一度、パリ五輪出場の道を閉ざされていた。昨年6月の総合馬術団体の地域予選で3位に終わり、2位までに与えられる出場枠を逃していたのだ。ところが10月に2位だった中国チームの馬1頭が失格となったことから日本の順位が繰り上がり、馬の調達も含めて急遽、大舞台に向け準備を進めることになった。「グラフトンストリート」は五輪本番を16歳で迎えるベテランだったが、大岩とはウマが合った。
「6カ月で準備をしなければいけない。時間もないので、若すぎる馬では無理だと思っていました。経験値のある馬を選ぶ必要があるな、と。グラフトンストリートは乗っているとやはり頼りがいがある。難しさや乗りにくいところもあるんですけど、上手く導いてあげるとすごい力を発揮してくれるんです。
ただ、乗っていない時は言うこと聞かないです。体を洗っている時に、ドロドロのところに急にゴロンと寝て体を汚したり、顔を水の中にバチャバチャと突っ込んできたりね。やめろ、と言っても全然ダメ(笑)」
これぞ馬耳東風? のやんちゃぶり。ちょいワルの「グラフトンストリート」と呼吸を合わせて競技にのぞむためには、絶妙な手綱さばきが必要だった。