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「元キャバ嬢→スターレスラー」人気のウラには意外な“女性ファン”の存在あり? 記憶に甦るクラッシュ・ギャルズら「全女」全盛期のリング風景
text by
欠端大林Hiroki Kakehata
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2024/09/18 17:00
全盛期は会場のファンのほとんどが若い女性だったというクラッシュ・ギャルズ。プロレスの時代性は観客に現れるのかもしれない
女子プロレスラーが、同時代を生きる女性たちの生きざまを映し出す「鏡」のような存在であった時代は、遠い過去のものとなった感がある。それでも、肉体美と言葉を併せ持つジュリアの内面には、かつてローティーンの少女たちを熱狂させた「闘う女」の普遍的エッセンスが感じられる。
まだキャバクラ嬢だった時代、後楽園ホールで女子プロレスの試合を観戦したジュリアは、男性客で埋め尽くされた会場でひとり「違和感」を覚える。後方に陣取ったスーツ姿のサラリーマン風の男性ファンが性的な言葉を口にした瞬間、夜の店では聞き慣れているはずの下品な冗談に、ジュリアはなぜか怒りの感情を抱くのだ。
<私が最初に見た、マットでやる女子プロレスを観戦したときの嫌悪感と同じだ。女子選手をストリップでも見るような感じでニヤニヤ見つめている、この感じ。>(『My Dream ジュリア 自叙伝』)
この試合を観戦した日から間もなく、特に格闘技の経験もなかったジュリアは自らリングに上がることを決意し、プロデビューを果たす。
40年前、井田氏が全女の会場で見た、女性の側からのレジスタンスがこの世界を目指した「原点」となったとすれば、ジュリアの闘いがなぜ女性ファンに「届く」のか、納得がいくような気がする。
プロレスの「時代性」は観客席に現れる?
プロレスにおける「時代性」は、リングの上より先に、観客席に現れる。
「お騒がせ女」と呼ばれ、女子プロレス界の紊乱者であり続けたジュリアの自伝には、生い立ちとともに「時代」との格闘が描かれている。その評価はすべて、いまを生きるファンに委ねられていると言えよう。