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「元キャバ嬢→スターレスラー」人気のウラには意外な“女性ファン”の存在あり? 記憶に甦るクラッシュ・ギャルズら「全女」全盛期のリング風景
text by
欠端大林Hiroki Kakehata
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2024/09/18 17:00
全盛期は会場のファンのほとんどが若い女性だったというクラッシュ・ギャルズ。プロレスの時代性は観客に現れるのかもしれない
「ファンの9割以上が若い女性」の“全女”時代
かつて、日本の女子プロレス会場が10代の少女たちによって席巻された時代があった。
“全女”(全日本女子プロレス)のマッハ文朱、ビューティ・ペア(ジャッキー佐藤、マキ上田)らによって開拓された女性ファンの総数は、1984年に結成されたクラッシュ・ギャルズ(長与千種、ライオネス飛鳥)の登場によってピークを迎える。
当時、会場を埋め尽くしたファンの9割以上は10~20代の女性だった。
大宅壮一ノンフィクション賞を受賞(1991年)した『プロレス少女伝説』の冒頭で、著者の井田真木子氏(故人)は、「女子プロレスに何の関心もなかった自分」が業界の取材を開始するきっかけとなった「あるできごと」について書いている。
缶ビールを片手に試合を観戦しながら、ときに卑猥な野次を飛ばす中年男性ファンに、渾身の足踏みと「カエレコール」をぶつけ始めた少女たちの一群。リングの外に渦巻いていたその異様な熱量を目の当たりにした井田氏は、やがて次のような理解に到達した。
<プロレスをすることも、また、観戦に熱中することも、彼女たちにとって同質の体験なのだろうと、私は思った。観客席とリングは、あくまでも地続きなのだ。観客は、もう一人の自分の姿をリングに見て熱狂した。
それだけに、彼女たちは、自分とリングの一体感に水を差すような異物を徹底して嫌った。少しでも異質な観戦方法をとる観客や、自分たちと世代の違う観客、そして、どんな世代であれ男性は排除された。>(『プロレス少女伝説』)
黄金時代を牽引したクラッシュ・ギャルズは80年代にいったん解散した。