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「うぁぁーーー行くぞ!!」レーザー妨害や君が代ブーイングより…バーレーン戦取材記者の心が燃えた“陰のMVP”長友佑都、鈴木彩艶らの振る舞いとは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2024/09/11 18:25
レーザーポインター妨害に国歌斉唱時のブーイング。中東アウェイの洗礼にも日本代表の熱量は非常に高かった
キックオフ時刻のおよそ2時間前。スタジアムの入口で仲間の到着を待っている選手がいた。イランのエースFWメフディ・タレミだ。彼は準々決勝で出場停止となり、ベンチ入りできなかった。
アジアカップには不思議なレギュレーションがいくつもあった。その1つが、ベンチ外の選手はチームバスへの乗車はできないというルール。YouTubeチャンネル『JFA TV』の「Team Cam」を見返すとわかるが、日本のベンチ外の選手はチームバスをホテルで送り出した後、スタッフと共にスタジアムへ向かった。もちろん、レギュレーションを決めたのはAFCで、日本の選手に非はない。
ただ、あの日のタレミは違った。
一足早くスタジアムに到着し、チームバスが停車するところで仲間を待ち構えていた。仲間がバスから降り、ロッカールームへ向かおうとするタイミングで、一人ひとりに声をかけ、固い握手やハイタッチをかわした。エースの闘魂注入は、イラン代表の〈熱量〉が表れている行動だった。そして、それを上回る〈熱量〉を表現できていなかった日本はイランに力負けした。
「行くよ、行くよ! うぁぁーーー、行くぞ!!」
本題に入ろう。
あの敗戦から約7カ月後。バーレーン対日本のキックオフ時刻の少し前、スタメンの選手たちが、ピッチへと続くスペースに出てきた直後のことだった。日本代表の選手たちは最後尾から、堂安律、南野拓実、上田綺世……という具合に、先頭のキャプテン遠藤まで11人が1列に並んでいた。
その後ろのスペースに仁王立ちしていたのが、長友佑都だった。
そこに立った長友は鼓舞する中で興奮してしまうのか、上田よりも前まで出て行ったりもしたが、しばらくして黙り込んだ。試合直前は気持ちを高める作業をする選手も多く、みだりに声をかけるのは避けるべきだからだ。ただ、ピッチ入場のタイミングになれば別だ。
キャプテン遠藤の「行くぞ!」という掛け声が号砲となり、選手たちがピッチに出ていくときだった。長友が叫び始めた。両手を力いっぱいに叩きながら。
「行くよ、行くよ! うぁぁーーー、行くぞ!!」
今の日本代表に存在している熱量――それがさらに乗り移った長友のアクションだった。見ている者の背筋をゾクっとさせるような迫力とたくましさ。汗にまみれながら、心の底から叫べる37歳は“カッコ良かった”。