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「練習は毎日2時間半」「スポ薦ナシ」の“偏差値65”進学校が、全国準優勝の関東一を崖っぷちまで追い詰めたナゼ「野球への異常な愛が…」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph by(L)Nanae Suzuki、(R)Asahi Shimbun

posted2024/08/31 11:04

「練習は毎日2時間半」「スポ薦ナシ」の“偏差値65”進学校が、全国準優勝の関東一を崖っぷちまで追い詰めたナゼ「野球への異常な愛が…」<Number Web> photograph by (L)Nanae Suzuki、(R)Asahi Shimbun

芝を率いた増田宣男監督(左)と主将の久米崇允選手。久米たち今年の3年生には「野球への異常な愛情があった」と指揮官は振り返る

 ただし、3人の投手は関東一高打線を抑え込んだわけではない。ランナーを出しては、「遅球」でタイミングを狂わせたのだ。内野ゴロ、ポップフライを打たせてピンチを切り抜け、関東一の残塁は14を数えた。増田監督は、この試合に限っていえば低反発バットの導入が幸いしたと見る。

「武田君のストレートは、マックスで120キロくらいでしょうか。変化球だと100キロ台になります。関東一高さんは140、150キロのピッチャーを想定して練習していると思うので、タイミングが合っていない感じはありました」

低反発バットと軟投派の化学反応も影響?

 増田監督は芝の投手陣を「3人とも、いわゆる軟投派になると思います」と分析する。

「低反発バットになってから、速球を弾き返せばもちろんいい当たりは出ますが、緩い球だと打球の速度も落ちるんです。今年の高校野球に関していえば、そうした傾向が見えたと思います」

 芝の「バッティング大好き」な3年生からすれば、打球が遠くまで飛ばないジレンマに悩まされただろうが、投手力から見れば低反発バットは味方したともいえる。

 私は夏の甲子園で大阪桐蔭、智辯和歌山が軟投派の投手に手こずったのを見て原稿を書いたが、ある意味、低反発バットの導入は戦力差を縮める役割を果たしているのではないか。

 それでも、芝と関東一の間には、埋められない素質の差はあった。

 この試合のスタッツで特徴的なのは、関東一の「残塁14」と、芝の延長10回での「三振16」という数字である。関東一は仕留め損ね、芝は坂本慎太郎、坂井、畠中鉄心、大後武尊というトップレベルの投手の前にバットが空を切った。増田監督は三振数を知らなかったらしく、苦笑いを浮かべながら頭をかいた。

【次ページ】 目標は「甲子園出場」…その現実味

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