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甲子園準優勝の関東一が実は初戦で“負けかけて”いた!? 「世紀の番狂わせ」目前だった偏差値65「港区ナゾの中高一貫校」の正体とは?
posted2024/08/31 11:02
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
(L)Hideki Sugiyama、(R)Nanae Suzuki
京都国際の初優勝で幕を閉じた今夏の甲子園。決勝戦でその京都国際と大熱戦を繰り広げたのが東東京代表の関東一だった。実は同校、夏の初戦となった東東京大会3回戦で、8回までリードを許し、タイブレークまで縺れ込む辛勝を経験している。すわ「世紀の番狂わせ」か――と強豪を追い込んだのは、都内では野球よりも進学校として名高い芝高校。関係者を驚かせた大接戦のウラには、一体何があったのだろうか?《NumberWebノンフィクション全3回の1回目/つづきを読む》
校舎のうしろには、東京タワー。隣にはオランダ大使館。
そんな港区の一等地に芝高校はある。
2024年の大学入試では東京大学に現浪合わせて18人が合格、進学実績で知られた学校だ。
その芝が、今年の東東京大会3回戦、甲子園で準優勝した関東一高相手に、8回表を終えて3対2とリードしていたのをご存じだろうか。
甲子園準優勝・関東一はなぜ追い詰められた?
番狂わせは目前だった。
関東一高が夏の甲子園の決勝を戦った翌日、芝高校に増田宣男監督を訪ねた。
柔和な表情で、「あの試合について取材を受けるのは初めてです」と話す。まず、組み合わせが決まった時の感想から尋ねてみた。
「2回戦で豊島学院さんに勝てば、3回戦で関東一高さんと対戦できることを楽しみにしていました。私はこの夏で高校の硬式野球部の監督から退き、その後はコーチとしてサポートすることが決まっていたので、期するものはありました」
実は3年前の2021年、芝は東東京大会の準々決勝で関東一高と対戦している。
「この時は4回が終わって0対0といい形で試合を進めましたが、5回裏に一挙8点を取られて、7回コールド負けとなりました。
準々決勝まで勝ち上がると、ウチのようなチームは余力がなくなってきますが、甲子園を目指すチームは、ようやくこのあたりからエンジンがかかり始める感じでしょうか。総合力の差は感じました。その試合のこともあったので、関東一高さんと再戦したいという思いは強かったです」