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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「プロのストライクゾーンはルールブック通り」“高校野球ストライク”は実際あるの?…現役審判員が語る「誤審問題」ホントのトコロ
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/08/21 17:02
島根の大社高校の躍進など盛り上がりを見せている夏の甲子園。一方でパリ五輪からの流れもあり、散見された誤審疑惑への厳しい声も
「社会人→大学→高校と少しずつ広くなる」ゾーン
「野球って、詰めて考えたら、いかに人間(アンパイア)に『ストライク!』って手を上げさせるか、『アウト!』って手を上げさせるのか。そこだと思います。いかに、人間に対して説得力のあるプレーができるのか。そこが野球の奥深くて、いちばん面白いところだと思うし、そういうことを追究することが、先々の社会生活にすごく役立つと思うんです」
そんな“ジャッジの機微”が最も出るのが高校野球特有のストライクゾーンなのだという。SNSなどでもよく話題になる「甲子園ストライク」に関しても、審判員の方はこんな風に説明してくれた。
「ルールブック通りということであれば、やっぱりプロ野球のストライクゾーンがいちばん正しいと、僕は見ています。プロのストライクゾーンがいちばんルールブック通りで、社会人野球、大学、高校って、少~しずつ広くなっている。特に、左ピッチャーのクロスファイアー。右バッターの内角に食い込むボールなんて、かなり広い。そう思いませんか」
実際にそう見えると、その審判員の方は言いきる。
「18.44メートル向こうの小さなゾーンにストライクをきめるって、すごく難しい行為ですから、そのレベルの技量によって、ボーダーラインが少しずつ違うって、むしろ合理性があると思うし、選手の上達のためにも悪いことじゃない」
これも、僕が勝手に考えていることなんですが……ときり出してきた話が、興味深かった。
「アンパイアの仕事について、もっとメディアが注目して、取り上げてくれてもいいんじゃないですか。同じグラウンドで、選手たちと一緒にゲームを進行させて、投げる瞬間、打つ瞬間は選手たちが主人公ですけど、ジャッジの瞬間は、自分たちアンパイアが<主役>なんです。
もちろん、微妙なジャッジをうんぬんするのも構わないし、逆に、正確なジャッジばかりの試合があったら、『お見事!』とほめてもらったり。映画の世界にもあるじゃないですか、主演男優賞と助演男優賞っていうのが」