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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「アンパイアの判断がいちばん正しいんです」続く熱戦のウラ側で…相次ぐ“誤審疑惑”に揺れる高校野球 現役審判員が語る「ジャッジのリアル」
posted2024/08/21 17:01
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
JIJI PRESS
連日熱戦の続く真夏の甲子園。球児たちの全力プレーに胸が熱くなる一方で、今大会も度々話題になるのが微妙なジャッジを巡る“誤審問題”だ。先のパリ五輪でも多くの判定が物議を醸しただけに、高校球児たちの晴れ舞台でも侃々諤々の議論が巻き起こっている。そんな喧騒を現役の審判員はどう見ているのか。話を聞いた。《全2回の1回目/つづきを読む》
この夏の甲子園。
ある試合の後半での出来事だ。
2死三塁。左バッターが引っ張った一塁ゴロ。
ベースカバーに走った投手に一塁手からボールが送られて、駆け込んだ打者走者より、投手の方が一瞬先に一塁ベースを踏んで、間一髪、アウト!
そう見えたプレーだったが、次の瞬間、一塁塁審が決然と両手を広げ、「セーフ!」と叫んでいた。
アウトだと思って駆け抜けていた投手がびっくりして振り返り「ちょっ、ちょっと、待ってくださいよ」とばかりに、右手を振って、「違う、違う」のジェスチャーだ。
エエーッという表情で、どうしたらよいかわからなくて、口を開けて、笑っている。
スローで確かめてみたら…微妙な判定も
人間、驚きや悲しみがつき抜けると、うっかり笑ってしまうことがあるが、まさにそんな、笑うしかしょうがない……アウトを訴えたくても、誰も味方になってくれそうもない、そんな空気を嗅ぎとってしまった時の、悲しげな笑いだった。
スロービデオで確かめてみたら、一塁ベースカバーの投手は、右足のかかとでベースの外野寄りを踏んでいるように見えた。
踏んだ直後に、投手の体が左側に傾くようにバランスを崩しかけたのも、高さのある一塁ベースをかかとで踏むという、難しい動作をしたための崩れに見える。
もし踏み損なっていれば、「しまった」という思いが多少なりとも顔に出るのが人間だろう。まして高校生なら……今回は、そんな気配が全く見えなかった。