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名将ズバリ「センチメートルの問題だ」日本女子バレー再建のカギはやっぱり“身長”? じつは崩壊寸前だったイタリアに学ぶ金メダルへの施策
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAP/AFLO
posted2024/08/20 11:03
パリ五輪では惜しくも予選ラウンド敗退となったバレーボール女子日本代表
日本に欠けていたのは、メンタルマネージメントだけではない。アメリカとの決勝戦において、イタリアはブロックポイントで11-0と圧倒した。
イタリアの主力ミドルブロッカー3人(アンナ・ダネージ、サラ・ファール、マリーナ・ルビアン)と日本の3人(山田二千華、宮部藍梨、荒木彩花)の平均身長差は「193センチvs183センチ」と、10センチもある。
イタリアには202センチの控えOPエカテリーナ・アントロポバをピンチブロッカーで入れる戦法もあった。前回東京五輪優勝メンバーを9人も揃えていたアメリカを決勝でまったく寄せ付けず、金メダルへ邁進した勝因の一つがミドルブロッカーたちの身長差とブロック戦術だったことは明らかだ。
筆者は以前、ロシア代表を率いて2006年世界選手権を制覇した名将ジョバンニ・カプラーラ(現・女子セリエAブスト・アルシツィオ監督)に、“もし日本代表監督になったらどういうチームにしたいか”と尋ねたことがある。「一も二もなく高身長の選手を揃える。センチメートルの問題だ」と即答された。
バレーボールは不公平な競技で、ないものねだりをしても仕方ない。だが、いつまでも「フィジカルに劣る」を言い訳にしていては世界との差は永遠に縮まらない。日本女子代表は高身長選手のスカウティングや積極登用により本腰を入れるときではないか。
2世選手や帰化選手の発掘スカウトを
イタリアの五輪初優勝の原動力は、間違いなく外国にルーツをもつ移民系5選手にあった。5人の内、OPエゴヌとMBファール、そしてOHミリアム・シッラ(ベストアウトヒッター受賞)は不動のスタメンだった。
バレー大国イタリアは保守的であるがゆえに、実は移民系選手の積極登用が遅れた。
それぞれナイジェリアとコートジボワールにルーツを持つエゴヌとシッラが初出場したのは2016年リオ五輪だ。それ以前の国外ルーツを持つ代表選手は、キューバから亡命し結婚後に2008年北京五輪に出場したOPタイスマリー・アゲロだけだった。
エゴヌとシッラはさまざまな国際大会を経験しながら、東京大会を経て8年、3度目の五輪で一番輝くメダルをもたらした。
移民系選手や2世選手を登用してもすぐに結果が出るわけではない。傑出した才能が突然日本に生まれたりはしないし、これは他国でも同様だ。
人種差別や誹謗中傷の問題は今もあるが、少なくともイタリア・バレー界は外国ルーツのフィジカルを取り入れること自体に拒否反応や議論が出るという段階はとうに通過している。
パリ五輪では、宮部藍梨がゲームの要所でビビッドな働きを見せた。陸上競技やバスケット、サッカーと同様に、国内外を問わず2世選手や帰化選手の発掘スカウト、育成、登用を日本バレー界もより積極的に進めていくべきではないか。