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「誰もが勝てると思った」バレー男子イタリア戦…エース石川祐希復活もコーチ陣が語る“遠かった最後の1点”「1、2セットはうまくいきすぎた」
posted2024/08/24 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Asami Enomoto / JMPA
発売中のNumber臨時増刊号「パリ五輪 熱狂の記憶」に掲載の[果てしなき頂点への道]バレーボール男子「1点の重みを糧にして」より内容を一部抜粋してお届けします。
数字は残酷だ。
バレーボール男子日本代表のパリ五輪の最終成績は、東京五輪と同じ“7位”。
しかし、その意味合いは大きく異なると、準々決勝イタリア戦を観た人ならば誰もが感じるだろう。
もちろん、低迷していた日本男子バレーが東京五輪で29年ぶりの決勝トーナメント進出を果たしたことは快挙だった。だが準々決勝ではブラジルから1セットも奪えずに敗戦。あの頃のチームは世界へ羽ばたくための、まだ助走段階だった。
石川祐希が不調も、なんとか乗り切った予選ラウンド
そこから3年間で日本は飛躍した。昨年のネーションズリーグ(VNL)で、主要な世界大会では46年ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得。今年の同大会では決勝に進出し、銀メダルを手にした。世界ランキングは2位にまで上昇。金メダル獲得を目標に掲げ、パリに乗り込んだ。
だが、予選ラウンドは苦戦した。目標を高く掲げるほど、予選で負けるわけにはいかないという重圧がのしかかる。しかも東京五輪までは予選ラウンドが5試合だったが、今回は3試合。1戦の重みが増した。
大黒柱の石川祐希が苦しんでいた。初戦のドイツ戦ではチームトップの22得点を挙げたが、2戦目のアルゼンチン戦はどこか乗っていけない。表情は不安げに見えた。
アルゼンチン戦で日本は今大会初勝利を挙げたが、石川はチーム4番目の11得点。3戦目のアメリカ戦は2セットを失った後、石川に代わって入った大塚達宣の活躍で1セットを取り、8位で辛くも決勝トーナメントに駒を進めた。
試合後のインタビューで石川は、「非常にプレーが悪かったので、託してもらえるところでまったく託してもらえなかった」と自身へのもどかしさを吐露した。
セッターの関田誠大も悩んだはずだ。他の大会なら、石川の打数を増やして復調させることも試みたかもしれない。だがドイツに敗れ、あとがない状態。関田は好調の西田有志や、3年間強化してきたミドルブロッカーとのコンビを軸に予選ラウンドを乗り切った。
守備がはまったイタリア戦。観客を魅了し味方につけた
準々決勝の相手は予選ラウンド1位のイタリア。2022年世界選手権の王者だが、日本にとってやりにくい相手ではなかった。対戦経験が多く、昨年のVNL3位決定戦では日本が勝利している。
また、石川はイタリア・セリエAで9季プレーし、高橋藍も3季腕を磨いてプレーオフファイナル進出も果たした。西田も'21-'22シーズンにプレー経験があり、日本にとっては熟知している国。特に石川の爆発を呼び込むには最適の相手だった。
フィリップ・ブラン監督は準々決勝を前に、石川についてこうコメントした。