スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「日本人選手は全然質問しなかった」涙の退任、ブラン監督は日本バレーを8年間でこう変えた…天才セッター関田誠大への気遣い「セキタ、バレーを楽しもう」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2024/08/10 17:05
退任するブラン監督と涙の西田有志。ブラン監督は2017年に来日。コーチ時代から約8年間、日本代表を指導してきた
「どのカテゴリーでも優勝を経験してきたせいなのか、関田はバレーボールに対してシリアスすぎるのです。常に100%を求める。彼は完璧主義者なのです。ただし、バレーボールとは、ミスがつきもののゲームです。時には20%でも試合に勝てることがある。いいんです、20%で。時に妥協することがあってもいい」
そしてブラン監督は、こう続けた。
「関田には、バレーボールを楽しんで欲しい。なぜなら、バレーボールとは楽しいものだからです。シリアスでもいい。でも、時には楽しんで欲しい。関田にはそのことを伝えています」
イタリア戦、第2セットまで関田のトスワークは相手を翻弄した。特にミドルからの攻撃は百発百中だった。2セット連取できたのは、事前の分析による戦術を、関田が完璧に遂行したからだろう。
しかし、試合が進むにつれ、イタリアの対策が有効になり、関田は苦しいトスワークを強いられる場面が増えた。そうした場面を見て、ブラン監督が関田をキャプテンにはしなかった理由が分かった。ブラン監督はキャプテンについて、こう話していた。
「私が預かるチームでは、セッターをキャプテンにすることはありません。なぜなら、セッターは試合中、常に脳内を高速回転させなければならず、審判と交渉する余裕などないからです」
関田のハードワークを見ると、ブラン監督の言っていることがよく理解できた。
綱渡りをしながら、景色を楽しむ余裕はない。
日本には何が足りなかったのか?
これだけのタレントが揃いながらも、イタリアには勝ち切れなかった。その事実は重い。
イタリア相手に足りない要素があったとするならーーそれはブロック力ということになる。昨年の時点で、ブロック強化について、ブラン監督はこう話していた。
「ディグ、トス、サーブに比べ、ブロックについてはまだまだ改善の余地があります。ここを強化しなければならない」