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「うーーん、いろんな壁がね」スペイン戦前日“強めに反論した”大岩監督が言葉を詰まらせ涙…記者が最後に聞いた「パリ五輪指揮官のホンネ」
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byTakuya Nakachi/JMPA
posted2024/08/11 11:00
スペイン戦後、涙にくれる藤田譲瑠チマを抱きかかえる大岩剛監督。指揮官もまた、感極まる場面があった
そんな流れからするとスペイン相手に2年前の雪辱を果たすことも、あながちない話ではなさそうな気がした。
一方で、筆者が個人的に過去の取材から感じるのは“自分たちのサッカー”へのこだわりは“負けフラグ”でもあるということ。特にこうした大一番で、勝負以外のなにかしらのこだわりを誰かが口にするのは危険だ。あくまで勝ちだけにこだわるべきなのだ。
試合では、確かにパスサッカーで攻め込むことに成功した。
特に前半は、相手を追い詰めた。右サイドの関根大輝、山田楓喜と中盤の山本らが絡み、ゴールに迫ったシーンもあった。スペインを特に脅威に感じる場面もなく、ボールロストからフェルミン・ロペスにシュートを許した11分の失点シーン以外はほぼ日本が支配していた。しかし、前半日本のプレスに苦しんでいたスペインは、徐々にそれをかいくぐりペースを回復するようになった。試合展開としては2年前と似たような、序盤は日本のペースでやらせてもらえるが、動きに慣れた後には結局封じられてしまった。
試合を優位に進められるチャンスはあったが
自分たちのサッカーの片鱗は見せたかもしれないが、負けは負けだ。試合後の藤田の言葉が的確に状況を説明する。
「勝てていないので。こういう大会は内容より結果が全てだと思うので、(2年前から実力差が)詰まったとかそういう考えはできない。もっと強くなりたい」
大岩監督は手応えがあったからこその悔しさを口にした。
「前半は特に支配できている時間が長かっただけに、試合を優位に進められるようなチャンスがあったことは見ている皆さんも感じたと思う。そこで決めきれないのは実力がまだまだ足りないのだと思う」
うーーん、いろんな壁というかね
テレビのフラッシュインタビューを終えて、我々のようないわゆるペン記者の囲みにも応じた。
大岩監督にとって、五輪代表監督を務めた日々はどのような期間だったか? とふんわりとはしているが今聞くべきだと思ったことを聞いた。あまりにもざっくりとした問いに「すごい大きな(質問だ)」と笑いながら、それでも過去を振り返りながら話し出した。
「うーーん、日本代表として五輪を目指す中で……という、いろんな壁というかね、障害がありましたけど……」
ここで詰まると、なかなか言葉が出なくなった。
「まあ選手がね、本当に成長したと思います、なんか………。若い選手たちなのでね……まあいろんな………ダメだね(笑)」
そう笑ってごまかした。簡単ではなかった日々と選手への思いが溢れていた。
スペイン戦前と当日の2日間の取材現場では、むき出しの大岩監督が見られたように思う。記者会見に比べれば随分心を動かされる言葉が多かった。
選手の今後に期待という言い方はよくされるが、筆者は五輪を経た監督が次にどのような現場で我々を楽しませてくれるのか、期待したい。
<第1回、第2回からつづく>