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「うーーん、いろんな壁がね」スペイン戦前日“強めに反論した”大岩監督が言葉を詰まらせ涙…記者が最後に聞いた「パリ五輪指揮官のホンネ」
posted2024/08/11 11:00
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
Takuya Nakachi/JMPA
鉄壁だったはずの指揮官が涙をこらえられず
冒頭から申し訳ないのだが――大岩剛監督の記者会見は面白みがないことで有名だ。ディフェンダー出身だからというわけでもないだろうが、大勢の前での発言は鉄壁の硬さでつけいる隙もない。逆にその鉄壁さを面白がるしかないほどだ。
例えば、7月3日の五輪代表メンバー発表会見での発言を振り返ってみるとよくわかる。当確とみられていた松木玖生が外れた件について聞かれて「今回は選ばれた選手たちのお話をぜひさせていただきたい」と、けんもほろろ。その後関連する質問が2度飛んだところで、同席していた山本昌邦ナショナルチームダイレクターがたまらず「移籍の可能性」に言及した、という流れだった。
この会見では大岩監督が発言した分量は山本氏の半分以下で、内容的にも当たり障りのないものに終始した。本当の事情も、大岩監督の感情も伝わらない、というよりも確定情報以外なにも伝えまいという確固たる意思だけが伝わった気がする。
その鉄壁のはずの大岩監督が、涙をこらえられなかった。
敗れたスペイン戦後のフラッシュインタビュー、カメラの前に立った時点からすでに目は赤かったが、今後選手たちに望むことは、と聞かれると涙で言葉が出ず数秒沈黙した。記者会見での大岩監督とは全く違う、人間性が垣間見えた。藤田譲瑠チマは「僕たちはこのチームを愛していた」と表現していたが、大岩監督はじめコーチングスタッフもそうだったのだと伝わる一幕だった。
スペイン戦前日、大岩監督が少し強めに反論したこと
発言や表現に細心の注意を払う鉄壁の大岩と、案外情に脆い大岩。最後の2日間は後者の大岩が多く見られたと思っている。
スペイン戦前日の囲み取材で、こんなシーンがあった。記者が「決勝トーナメントに入り相手は一段ギアを上げてくるが、対応力、経験値もあり自信があるのでは」という趣旨の質問をした。この質問に対して大岩監督は少し強めに反論したのだ。