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高校野球“酷暑対策のリアル”「関係者が凍ったペットボトルを」夏の甲子園より試合数が多い地方大会観戦後、高野連担当者に見解を聞くと… 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/08/09 06:01

高校野球“酷暑対策のリアル”「関係者が凍ったペットボトルを」夏の甲子園より試合数が多い地方大会観戦後、高野連担当者に見解を聞くと…<Number Web> photograph by JIJI PRESS

大阪府大会を制した大阪桐蔭。各地方大会の酷暑対策はどんな感じだった?

 奈良県は、橿原市のさとやくスタジアムでの10時からの第1試合を観戦。屋根がかかったネット裏にお客が集中した一方で、一・三塁側のスタンドは、日差しを遮るものが一切ない。両校応援団は、観客席にテントを立てて日よけにしていた。

 ただ多くの球場では、内野に屋根がなくても、外野には樹木が植わって木陰ができていることが多い。多くの地方大会では管理の関係上、外野席を開放していないことが多い。「暑熱対策」を考えれば木陰がある外野席に観客を入れることも考えるべきではないか。

 兵庫県も尼崎市記念公園野球場で10時開始の第1試合を見た。7月後半から甲子園の大会が始まる8月にかけては、地面が熱せられて朝から気温が上昇し、猛暑はさらに進む。7月上旬とは異なる対策が必要になってくる。

 この試合では3回と7回にクーリングタイムが設けられていた。

強く印象に残ったのは「審判」の行動だった

 すべての試合で、強く印象に残ったのは「審判」だ。

 野球の審判は「Master of Game」であり、プレーのジャッジだけでなく試合進行全般を担っている。

 今夏の地方大会では、攻守の入れ替わりの時は、球審や塁審が選手ひとりひとりに「あわてなくてもいいから、(ドリンクを)ゆっくり飲んでから行きなさい」と声をかけていた。

 クーリングタイムを設けていない地方でも、イニング間に、体調を整える時間をしっかり設けていた。また、足がつったようなそぶりを一瞬でも見せた選手は、そのままグラウンドに行かせず、体調を確認していた。

 試合を維持し、選手を守るために、審判は使命感を持ってできることをすべてやろうとしている印象だった。ただ審判の中にも足がつるなどの症状を訴える人がいたようだが……。

高野連の事務局長は現状をどうとらえているか

 高校野球と言えば「2時間ゲーム」。かつては甲子園でも地方球場でも、選手交代の際には審判が2時間以内に試合を終わらせるために「駆け足で」「急ぎなさい」と急かしていたが、今はむしろしっかり時間を取って、給水や休憩の時間を取らせている。

 その結果として9回で2時間半になる試合もあったが「急ぐこと」よりも選手の健康を重視する姿勢が、はっきり見て取れた。

 しかし、地球温暖化は歩みを止めていない。各都道府県の高野連と日本高野連の努力が、どこまで通用するのか、という問題は厳然として存在する。

 日本高野連の井本亘事務局長はこう話している。

【次ページ】 前例にとらわれない「暑さ対策」を

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井本亘

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