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涙の引退…古賀紗理那に「ごめん」Vリーグ優勝監督がパリ五輪の結果に危機感を抱く理由「女子バレーは変わらなければならない」 

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金子隆行

金子隆行Takayuki Kaneko

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2024/08/04 17:08

涙の引退…古賀紗理那に「ごめん」Vリーグ優勝監督がパリ五輪の結果に危機感を抱く理由「女子バレーは変わらなければならない」<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

ケニア戦後、涙を流した古賀紗理那(28歳)。パリ五輪を最後に現役引退を表明している

 そしてもう一つ、大きな課題として露見したのがミドルブロッカーの攻撃本数と決定率の少なさです。ポーランド、ブラジル戦をトータルして日本のA、Bクイック(の決定率)が33%、23%だったのに対し、相手はどちらも合わせて71%。圧倒的な差が生じています。

 振り返れば、アテネからロンドン、リオ五輪の頃までは日本代表はミドルブロッカーの存在感が常に大きかった。しかし、世界各国のミドルの存在感が増していくのとは対照的に、東京五輪の頃からミドルブロッカーの打数は減り、重要視されることも少なくなってきた。

 ミドルの本数が少なければ、いくら強力なバックアタックがあっても相手はマークしやすくなる。当然、ブロックで止められる回数が増えます。先ほど「最後まで古賀選手のチームだった」と言いましたが、“良くも悪くも”ここに頼らざるを得なかった。全体の1ピースではなく、バックアタックに依存しすぎてしまったことは日本代表の課題として浮き彫りになりました。

女子バレー界全体に突きつけられた課題

 厳しい結果になったとはいえ、選手たちは本当によく戦っていました。初出場の選手が多い中であっても、それぞれが役割を果たそうとしていましたし、その姿には尊敬の念、リスペクトしかありません。

 ただ、周囲が見るのは「結果」です。現時点では少しの望みはありますが、2大会連続での予選ラウンド敗退という結果は、日本代表だけでなく、女子バレー界全体に突き付けられたものでもあると思っています。

 1964年の東京オリンピックで金メダルを獲得した“東洋の魔女”の時代から、日本のバレーボールはフィジカルを鍛えなければならないと考えられてきました。当時は長時間、それこそ身体に沁み込ませるほど練習を重ねることで体現してきましたが、今の時代は違います。練習時間も短くなり、頭で考えるバレーボールが主流になりました。ただ、僕はやはり、フィジカルは最も重要で不可欠な要素だと思っています。

 必要なのは、世界と戦うためのフィジカルを備えるための練習。しかもそれを「スタッフがやらせる」のではなく「選手がやる」意識を持つこと。それぞれがこの練習は何につながっているのか、そもそも自分が何を求めているのかを追求し、こうなりたいという明確な目標や意識を持って日々、トレーニングに取り組まなければ意味はありません。

 世界で戦うプロ選手たちは、一回一回のトレーニングや試合に生活と人生を懸けている。その意識の違いが、ブラジル代表が見せたような「この試合は絶対に勝つ」と相手を圧倒するオーラや力になる。世界との差は、まさにそこです。

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