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バレーボールPRESSBACK NUMBER
涙の引退…古賀紗理那に「ごめん」Vリーグ優勝監督がパリ五輪の結果に危機感を抱く理由「女子バレーは変わらなければならない」
text by
金子隆行Takayuki Kaneko
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/08/04 17:08
ケニア戦後、涙を流した古賀紗理那(28歳)。パリ五輪を最後に現役引退を表明している
今だから言えることですが、2022年に日本代表のキャプテン就任の打診を受けた時、古賀選手は決して前向きではありませんでした。むしろ「こんなに中途半端な状態では行きたくない」と、キャプテンどころか、日本代表への参加も断ろうとしていたほど。その時、僕が彼女に言ったのはひとつ。
「日本代表という場所はそう簡単に行ける場所じゃない。行きたい、行きたくないではなく、せめてちゃんと話だけでも聞きなさい」
僕の言葉が響いたか、響かなかったかはわかりません。でも結果的に眞鍋政義監督との話し合いに応じ、日本代表として、キャプテンとしてパリ五輪まで頑張ると決めました。決断した姿を見て「覚悟」というのはこういうものかと思い知りました。
「メダルを獲る」と公言したように、大げさではなく全てを懸けた大会だったと思います。ただ、同じ思いを抱いてコートに立っていた人間がどれほどいたのか。外からでは量れませんが、古賀選手と同じように、それ以上の強い思いをもった選手はいなかったかもしれません。
東京、パリ、リオの予選を含めた3度のオリンピックを振り返れば、決して満足できるものではなく、オリンピックには愛されなかったバレー人生だったのかもしれない。それでも本気で臨んだ姿は、周りに与える影響も決して少なくなかったと信じています。
決定率は上回っていたが、効果率が低かった
望んだ結果は得られませんでしたが、古賀選手のパフォーマンス自体は決して悪くありませんでした。
スタッツを分析したところ、初戦のポーランド戦では古賀選手だけでなくイタリアで経験を積んだ石川真佑選手も含めたレフトサイドからのレセプションアタック(相手サーブからの攻撃)の決定率は44%と、ポーランドの41%を上回っていました。トランジションアタック(自チームのサーブからのラリーを制する)の決定率も40%超え。ただ、スパイク効果率(チームへの貢献度を測る数値)を見るとポーランドが上回っている。つまり、取り切りたい場面で取り切れなかったことが勝敗に結びついたと言えます。
ただ、確かにブロックに捕まる場面も多かったですが、2人は日本が誇るエースとして警戒される中でよく決めていたと思います。
ライト側に入る林琴奈選手も攻守にわたって奮闘していました。ただ、攻撃力だけを見れば、同じポジションに入る和田由紀子選手のほうが与えるインパクトは残していました。古賀選手や石川選手のバックアタックに頼るあまり、林選手の巧さを生かしきれなかった。林選手を生かした多彩な攻撃を仕掛けることがもっとできたのではないかと感じる場面もありました。