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「バスケで“地元有利判定”は当たり前」河村勇輝への誤審疑惑…フランス戦で見逃されたポイント「そんな汚いことをしてまで…」日本バスケに期待したい“発想”
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJMPA
posted2024/08/02 17:08
残り16秒で4点リード、大金星を逃したフランス戦。チーム最多得点を挙げた河村勇輝
また、今回もあの場面で、フランスにスリーを打たせる前にファウルをして、あえてフリースローを与える戦術があったのではないか、という声もある。勝っている方がわざと反則をする、ということが呑み込めない人もいるだろうが、これもアメリカではよく見る戦術である。フリースローを2本決められても2点差で、ボールの所有権が奪回できる。
ただし、この戦術は日本には向かない場合があって、1本目のフリースローを決められたあと、相手が2本目を外した時、リバウンドを取られてさらに2点、3点を取られてしまう最悪のシナリオも想定されるのだ。
特にフランス相手には、そのリスクが高かった。なぜなら、ウェンバンヤマがいるのだから――。そう考えると、この戦術は現実的ではなかった気がする。
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このように、ラスト1分を切ってからのプレーを考え出しただけでも無数にシナリオが派生していく。これは他の競技にはない魅力で、バスケットボールの文化である。
「語られるべき試合」
特筆すべきは、日本バスケットボール界にとって、この一戦が「語られるべき試合」になったことだ。
私だけでも、これだけ「タラレバ」を並べているのだから、関係者はなおさら、ファンも言いたいことはたくさんあるだろう。
どの競技にも「世界との境界線」に踏み出した試合がある。
サッカー。1993年の悲願のワールドカップ出場を目前にしての「ドーハの悲劇」。
ラグビー。2015年、南アフリカを破って世界を驚かせた「ブライトンの奇跡」。
そして野球でいえば、侍ジャパンがWBCで語られるべき試合を2006年、2009年、2023年と3度も経験している。
男子バスケットボールは、昨年に沖縄で行われたワールドカップで世界への扉を開いたが、今回の敗戦がさらに火をつけるのではないか。
私が期待したいのは、このパリ・オリンピックで次のブラジル戦、そして叶うならば準々決勝で語るべき試合を連発してくれることだ。
フランス戦では選手たちの出力が大きく、また八村の離脱が決まっただけに心配だが、なにかまた、奇跡を起こして欲しい。