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「バスケで“地元有利判定”は当たり前」河村勇輝への誤審疑惑…フランス戦で見逃されたポイント「そんな汚いことをしてまで…」日本バスケに期待したい“発想”
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJMPA
posted2024/08/02 17:08
残り16秒で4点リード、大金星を逃したフランス戦。チーム最多得点を挙げた河村勇輝
大学のアリーナという閉ざされた熱狂空間では、観客の「圧」が審判に影響するのは当然だ。地元の学校にフリースローが多く与えられるのはフツーのことだが、なぜアメリカ人がぶーぶー言わないかというと、それはホーム&アウェイで相殺されると分かっているからだ。向こうに行けば不利だが、こっちでは有利になる。最近はカンファレンスに所属する大学数が増えてしまったので、シーズンをまたいでホーム&アウェイを完結させる。
私自身はそういう発想になってしまっているから、今回もフランス有利な判定が起きがちだろうとは思っていた。しかし、日本の4点リードの場面、勝敗に直結する笛が吹かれてしまった。
では、どうすればよかったのか?
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たとえスリーポイントを決められたとしても、1点リードで残り10秒で自分たちのポゼッションになるのは、将棋でいうなら「詰めろ」の段階。決して悪いことではない。河村はジャンプせずに手を挙げる程度にして極力、接触を避ける方がベターではあった。
日本バスケに足りない「ゲームのクロージング技術」
常々、バスケットボールには試合に勝つ「クロージングの技術」が大事だと思っている。
たとえば、負けている方が、わざとファウルをして相手にフリースローを打たせ(外れることを期待して)、ボールの所有権を奪回する「ファウルゲーム」は一般的な作戦である。
ところが、日本の中学、高校の試合を見ていると、ファウルゲームに行かない学校が多い。いまはだいぶ変わったと思うが、10年ほど前には「そんな汚いことをしてまで」と話す指導者がいてびっくりした(全国大会での話ですよ)。また、選手がファウルゲームを仕掛けているのに、なかなかファウルを取らない審判もいる。
今回、解説の現役Bリーガー田臥勇太氏が、相手が有利な局面では「ここはファウルで止めて」といった実利的な解説をしてくれているので、聞いているとスッキリする。
とにかく、「反則=悪」という発想はやめて欲しい。必要に応じて、ファウルはするべきである。日本の都道府県大会では大差がつくことが多く、ファウルゲームを仕掛けるような展開にならない。私は、日本のティーンエイジャーはクロージング技術を磨く機会がアメリカに比べてあまりに少ないと思っている。
「残り16秒、4点リード」何をすればよかった?
河村がファウルを取られた場面で、「ファウルにいかないスキル」もまた、クロージング技術のひとつだ。