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女流棋士・西山朋佳29歳が初の女性棋士を逃して“異例の会見で涙した日”…「豪快な将棋を指して合格を」棋士も応援する“編入試験組の歴史”
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/04 11:00
朝日杯1次予選に勝って「棋士編入試験」の受験資格を獲得し、報道陣の取材に応じる西山朋佳女流三冠
勤務していた大手企業の上司に「棋士になりたい」という理由で、21年の春に退職を伝えた。自分の夢を実現するために退路を断ったといえる。その後、高性能のパソコンを購入し、AI(人工知能)を使って将棋の研究に取り込んだ。
小山は22年9月、朝日杯将棋オープン戦で中川大輔八段に勝ち、棋士編入試験の受験資格を得た。
その第1局は22年11月に関西将棋会館で行われ、棋士1年目で勝率が9割という若手精鋭の徳田拳士四段と対戦。そして激闘の末に、鮮やかな寄せで見事に勝った。
その初戦の勝利が大きく、23年2月に3勝1敗で合格した。小山は「人として目標にされる棋士になりたい。今後も厳しい戦いが続くので研究に励みます」と語った。
順位戦C級2組への昇級を決めた
小山四段は昨年5月の公式戦初対局を勝利で飾った。以後は一進一退の成績で、今年1月の時点で負け越したが、8連勝してギヤを一気に上げた。そして7月15日にNHK杯戦で谷川浩司十七世名人に勝ち、直近30局の成績が20勝10敗(勝率は6割6分7厘)となって、フリークラスから順位戦C級2組への昇級を決めた。なお、テレビ対局の結果は原則として放送前に明らかにしないが、節目の勝利ということでNHKがウェブ上で当日のうちに公表した。
小山は四段昇段後に最短の1年3カ月でC級2組に昇級した。ちなみに瀬川六段は3年6カ月、今泉五段は1年7カ月、折田五段は3年1カ月かかった。
新たな出発点に立った小山四段は、次のように抱負を語った。
「順位戦の対局で棋士の方々が深夜まで戦われるのを見て、これが棋士人生だと思うので、それを戦えるのはうれしい。モチベーションを年間を通してしっかり保ち、いい将棋を指したい」
四段昇段を逃した日、涙の記者会見
西山女流三冠は7月4日に朝日杯将棋オープン戦で阿部光瑠七段に勝った。
直近のプロ公式戦の成績が13勝7敗となり、《10勝以上・6割5分以上の勝率》という棋士編入試験の受験資格を得た。当日は対局後の取材に「受験させていただきます。とてもうれしいです。自分の持ち味を生かせるように頑張ります」と語った。そして7月25日に将棋連盟に正式に申し込んだ。
西山は奨励会にかつて在籍し、2016年度前期から三段リーグに参加した。8期目(19年度後期)の最終日には12勝4敗の成績で臨んだ。2局を連勝すれば、四段昇段の可能性があった。初の女性棋士の誕生を期待し、メディアは将棋会館に集まった。