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女流棋士・西山朋佳29歳が初の女性棋士を逃して“異例の会見で涙した日”…「豪快な将棋を指して合格を」棋士も応援する“編入試験組の歴史”
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/04 11:00
朝日杯1次予選に勝って「棋士編入試験」の受験資格を獲得し、報道陣の取材に応じる西山朋佳女流三冠
その相手は対局順に、佐藤天彦三段、神吉宏充六段、久保利明八段、中井広恵女流六段、高野秀行五段、長岡裕也四段が選ばれた。三段リーグで次点2回の成績を取ってフリークラス編入の権利を得たのに行使しなかった奨励会員、関西の人気棋士、銀河戦で瀬川に負けたA級棋士、女流棋界のトップ棋士、C級の若手棋士など、話題性に富んだ人選となった。
連盟新会長の米長邦雄永世棋聖は、将棋界の活性化につなげたい思惑があったようだ。
瀬川は棋士編入試験で、神吉、中井、高野に勝って3勝2敗で合格。05年11月に四段に昇段して35歳で棋士になった。
その後、棋士編入試験は5局のうち3勝で合格、対戦相手は直近の新四段の順、という現行の方式に決まった。
今泉、折田は奨励会在籍経験あり。一方で小山は…
14年12月には今泉健司アマ(現五段)が棋士編入試験で3勝1敗で合格。15年4月に四段に昇段して41歳で棋士になった。20年2月には折田翔吾アマ(現五段)が同じく3勝1敗で合格。同年4月に四段に昇段して30歳で棋士になった。今泉と折田は瀬川と同様に、奨励会にかつて在籍していた。
棋士編入試験の合格者はフリークラス編入後、10年以内に《30局以上の勝率が6割5分以上》という所定の成績を挙げて順位戦C級2組に昇級しないと引退となる。瀬川、今泉、折田はいずれも後に昇級した。
主要アマ棋戦で何回も優勝し、特別参加したプロ公式戦で所定の成績を挙げた小山怜央アマは、2022年11月に棋士編入試験を受験した。そして23年2月に3勝1敗で合格。同年4月に四段に昇段して29歳で棋士になった。現行制度で奨励会に在籍経験のない初の例で、岩手県出身者としても初めての棋士となった。
小山は11年3月11日の東日本大震災で被災し、実家は津波で流されて仮設住宅での暮らしを余儀なくされた。それでもパソコンで将棋を指し続けた。15年にアマ名人戦で優勝したとき、大震災について記者に問われると、「つらかったけどメンタル面で強くなり、みんなで協力して乗り越えたという自信が将棋に役立っています」と語った。
小山「人として目標にされる棋士に」
小山はプロ公式戦に何回も出場し、勝ち星を少しずつ積み上げていった。私はある年、将棋会館で小山の対局姿を見たことがある。周囲が棋士ばかりの中で、盤面にひたすら集中して正座をずっと崩さなかった。実に真摯な態度だった。
やがて棋士編入試験が視野に入ると、仕事をしながら将棋を研究することに限界を感じた。