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女流棋士・西山朋佳29歳が初の女性棋士を逃して“異例の会見で涙した日”…「豪快な将棋を指して合格を」棋士も応援する“編入試験組の歴史” 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2024/08/04 11:00

女流棋士・西山朋佳29歳が初の女性棋士を逃して“異例の会見で涙した日”…「豪快な将棋を指して合格を」棋士も応援する“編入試験組の歴史”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

朝日杯1次予選に勝って「棋士編入試験」の受験資格を獲得し、報道陣の取材に応じる西山朋佳女流三冠

 西山は2連勝(最終戦は伊藤匠三段)して14勝4敗の成績を挙げた。通常なら四段に昇段できるところだ。しかし、服部慎一郎三段と谷合廣紀三段も同成績で、西山より19年度前期の成績による順位がいずれも上位だった。規定によって服部と谷合が四段に昇段した。

 当日の夕方、昇段を逃した西山の異例の記者会見が行われた。放心状態で応じているうちに、逆転負けした将棋が思い浮かび、思わず涙がこぼれてきた。やっとの思いで帰宅すると、ネット動画を見ながらお酒を飲んで紛らわしたという……。

 西山はその後、周囲に励まされて三段リーグに臨んだ。次点をもう1回取れば四段に昇段できる。しかし、20年度前期は後半に8連敗、同年度後期も同じく6連敗し、昇段争いから脱落した。

今期NHK杯では藤井竜王・名人と対戦する

 西山は奨励会を退会し、21年4月に女流棋士三段と認定された。棋士編入試験については、「女流棋士になって新しいことがたくさんあり、今は自分を試しているところです。試験はあと1勝とかになったら考えるかもしれません」と語った。

 西山は23年6月から24年7月まで、プロ公式戦で13勝7敗の成績を挙げた。その中で梶浦宏孝七段、渡辺和史七段、佐々木大地七段、木村一基九段、高橋道雄九段など、タイトル経験者や若手精鋭に勝った。朝日杯将棋オープン戦では佐藤康光九段に惜敗したが、「佐藤先生の将棋は不思議で新鮮で、読んでいてすごく楽しかったです。対局中に笑いそうになる瞬間がありました」と率直な感想を語った。

 木村九段との対局はNHK杯戦で、次の相手は何と藤井聡太竜王・名人である。

 西山女流三冠は棋士編入試験で、次の棋士たちと順に対戦する。高橋佑二郎四段(26)、山川泰熙四段(24)、上野裕寿四段(21)、宮嶋健太四段(24)、柵木幹太四段(26)。第1局の高橋戦は9月に行われ、以降の対局は月に1局のペース。持ち時間は各3時間。

 対戦する棋士たちにとって、棋士編入試験はプロ公式戦に当たらないが、盤に向かえば全力を尽くすのが棋士の本分だ。熱い戦いが繰り広げられるだろう。

合格となる3勝は十分に可能なはず

 西山は前記のプロ公式戦の実績が示すようにかなり強い。合格となる3勝は十分に可能だ。

 実は、里見(現・福間)香奈女流五冠(32)が22年8月から棋士編入試験を受験したときも、若手精鋭を連破した実績によって合格すると思われた。しかし、絶対に負けてはならないという緊張感からか精彩を欠き、実力を発揮できないまま3連敗という結果となった。西山も同じ轍を踏まないでほしい。

 西山は過去10期の三段リーグ(16年度前期~20年度後期)で前記の棋士たちと対戦した。山川には2勝1敗、宮嶋には2勝、上野には1勝と勝ち越したが、三段同期の柵木には5連敗した。高橋とは対戦がなかった。

 西山にとって棋士編入試験は、「棋士」という重い肩書のかかった大きな勝負だ。通常の対局よりもプレッシャーを感じると思うが、「暴れ馬」と称される豪快な将棋を指して合格を果たしてほしいと、私は願っている。

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