核心にシュートを!BACK NUMBER
河村勇輝(23歳)の「フランス戦ラストプレー」は“誤審”だったのか? それでも日本の司令塔が貫く“自責思考”…意外だった「あるスタッツ」の中身
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKaoru Watabe/JMPA
posted2024/08/02 11:00
世界中で話題を呼んだ河村勇輝のフランス戦第4Qでのシーン。紛糾したものの、本人は至って冷静に次戦を見つめている
ただ、それらはきっと河村の思考とは相容れないだろう。バスケットボールの世界で繰り返し言われることがある。
「試合にはコントロールできることと、コントロールできないことがある。相手の調子や審判の判定はコントロールできないもの。だから、コントロールできることにフォーカスすべきだ」
それが成長するために、試合に勝てる選手になるために必要だからだ。その意味で言えば、河村は「自責思考」の人間だから、ここまで来られた。
興味深いのは、フランス戦で河村が7本ものリバウンドを記録したことだ。今大会の登録選手のなかで2番目に身長が低く、ゴールから遠いポイントガードの選手にもかかわらず、だ。
ただ、彼がリバウンドを取れたのは決して偶然ではない。
シュートの跳ね返りを予測するのは難しいため、「ボックスアウトのような基本的な動きを徹底する以外にリバウンドを増やす手段はない」と考える指導者もいる。
なぜ河村が多くのリバウンドを記録できた?
一方で、河村はリバウンドについて、こう考えている。
「リバウンドというのは、1人がサボってしまうと、全て崩れてしまうものだと思います。それに僕はポイントガードとして、リバウンドの嗅覚みたいなところは、自信にしている部分のひとつではあるので。ビッグマンをもっと助けられるような、50:50のルーズボールやロング・リバウンドなどは、常に拾っていきたいなという気持ちはあります」
2m10cmを超える選手が2人もいるフランス代表との試合の、勝負どころの4Qだけで3つもリバウンドを取ったのも、決して偶然ではないだろう。
リバウンドの数は、一定程度はコントロールすることができる。そう考える河村のバスケ論が正しいことを象徴していた。
フランス戦での活躍を受け、河村はオリンピックの第2節のベストファイブに選ばれた。NBAファイナルとシーズンの両方のMVPに選ばれた経験のあるヤニス・アデトクンボ(ギリシャ)、ニコラ・ヨキッチ(セルビア)らと並んでだ。その上、彼らよりも多い29得点を記録した。
それはチームが勝つために、あの試合で必要だと判断したのがゴールを決めることだったからだ。