実は昨シーズンの序盤戦、河村は得点を量産してBリーグの得点ランキングでトップを走っていた。日本代表の中心選手がそれだけの得点を記録しているから、その要因について何度も聞かれていた。河村はそのたびにこう答えていた。

「ランキングはあまり意識していないです。チームが勝ってなんぼのスポーツだと思うし。（前のシーズンよりも）得点が増えたからといって、チームとして勝てていない状況があるので。得点にはそこまで執着していないんです。『チームが勝てれば……』と思ってやっているので」

「自分が点を取らないといけない時間帯が絶対ある」

　チームとして勝つことだけが、河村にとって意味を持つのだ。ただ、この話には続きがある。自身の得点がどれくらいあるのかには決して固執しない河村ではあるのだが、こうも考えている。

「クラッチタイム（※試合最終盤などの勝負を分ける時間帯）であったり、チームが上手くいっていない時に、自分が点を取りに行かないといけない時間帯が絶対あると思います。そういったところは、自分で責任を持って点を取りに行きたいなと思います」

　フランス戦では、日本の得点源である八村塁が第4Qの残り8分30秒ほど残して退場した。だからこそ他の選手には彼の不在を埋めるだけの得点が求められて、河村がそれをこなした。それが、フランス戦でアデトクンボやヨキッチといった、NBAのMVP選手よりも多くの得点を記録した要因だった。

　日本は8月2日、グループリーグ最終戦でブラジルと3位の座をかけて戦う。

　すでにグループ2位以内に入る可能性がなくなった日本は、3つのグループリーグの3位のうちの成績上位の2チームに入ることで、目標とする決勝トーナメント進出を果たす。

　現時点では他の3位候補のチームと比べて、日本は得失点差で不利な立場にある。ブラジルに勝つというタスクだけではなく、なるべく多くの点差をつけるというタスクもある。八村に頼るだけでは足りない。

　そして、そんな試合だからこそ、「チームが勝つためにはどうすればいいのか」、そして「自分にコントロールできることは何なのか」という2つの真理を追い求める河村の活躍が求められるだろう。

#5に続く

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