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宮田笙子が贈った“ヘアピン”に彩られ「5人で戦うつもりで頑張ったのだと思う」コーチ陣もビックリ…体操女子“笑顔の予選”になった舞台ウラ
posted2024/07/29 17:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
10代カルテットがはつらつとした演技で激震を乗り越えた。パリ五輪体操の女子団体総合予選が行われ、4人全員が五輪初出場で10代というフレッシュなメンバー構成で臨んだ日本は、目標の160点を上回る合計162.196点をマーク。全体5位となり、8チームで争う決勝に進出した。
モナコでの直前合宿中にキャプテンでエースの宮田笙子の飲酒と喫煙問題が起き、宮田が五輪出場を辞退。他国が5人で団体を組み、各種目毎に5人中4人が演技をして上位3人の得点を合計する中、日本は、岸里奈、岡村真、中村遥香、牛奥小羽の4人全員が全4種目を行うという厳しい条件で試合に挑んだ。
五輪経験のある選手がチームにいないため、不安な部分があるのは当然ながら否めない状況。しかし、熾烈な代表選考会を乗り越えて選ばれた4人はタフだった。
最初の種目でいきなりハプニングが…
花の都パリらしい、カラフルな光の装飾が施されたアリーナで、日本は牛奥、岸、岡村、中村の順番に手を振りながら入場。大学2年生で最年長の牛奥が円陣で「やったるぞ!」と号令をかけると、大学1年生の岡村、高校2年生の岸、高校1年生の中村が「オー!」と呼応し、勇ましく演技を開始した。
すると、最初の種目である段違い平行棒ではいきなりのハプニングに見舞われた。日本の演技順は2番手が岡村、3番手が岸の予定だったが登録が逆になっていたため、この2人の順番を急きょ入れ替えることになったのだ。
しかし、4人でただ1人、昨年の世界選手権を経験している岸は慌てるそぶりを一切見せなかった。世界選手権では苦労していたE難度の「マロニーハーフ」をスムーズにこなし13.566点。続く岡村も「やるのが遅くなっただけ」と意に介することなく13.266点をマークした。
そして、4番手はチーム最年少ながら段違い平行棒を最も得意とし、「ナカムラ」の名のつくオリジナル技を持つ中村。「ナカムラ」はもちろん、G難度の大技「デフ」も見事に成功し、この種目でチーム最高の13.600点をマークした。
1種目を終え、日本の得点は40.432点。1種目平均40点を目標とする中、想定を超える好スタートを切った。