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宮田笙子が贈った“ヘアピン”に彩られ「5人で戦うつもりで頑張ったのだと思う」コーチ陣もビックリ…体操女子“笑顔の予選”になった舞台ウラ
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2024/07/29 17:30
7月28日の予選にて、見事な演技を見せた体操女子日本代表
コーチ陣の表情は「緊張→笑顔」に変化
2種目目の平均台は、繊細なバランス感覚が求められるうえに落下の危険性が最も高いが、若き日本はここでも強さを見せた。
1番手の岡村は入りの技でふらついたがその後は体の線の美しさを存分に見せるしなやかな演技を披露。2番手の岸は途中でバランスを崩しかけたが「チームのため、落ちたくない」と耐え、3番手の中村も連続技を次々と繰り出す伸び伸びとした演技できっちりまとめた。2種目を終えて日本は81.165点。選手たちはここでも目標値をクリアした。
落下のある2種目を乗り切り、勢いをつかんで迎えた3種目目のゆかでは、1番手として出た中村が、ラインオーバーのミスにも萎縮することなく伸び伸びと演技を楽しんでいるように見えた。すると、その様子が観客を引きつけ、会場から自然と手拍子が発生。2番手の岡村も「カノン」の曲に乗って流れるような演技を見せると、3番手の岸はH難度の大技「シリバス」を成功して会場を沸かせ、13.600点をマークした。
勢いに乗った時の10代選手のパワーはすばらしく、横で見守るコーチ陣の表情は、試合開始時の緊張感のある顔つきから演技を重ねる毎に笑顔になっていき、3種目目のゆかを終えた時には感無量の表情へと変化していった。
選手の思い「4人とも明るく真面目なチーム」
ゆかでは最後に出た牛奥もラインオーバーをして茶目っ気のある苦笑い。牛奥はゆかを終えて最後の跳馬に移る時、「最終種目が早いね」と周りの選手に声をかけるほど試合を楽しんでいたと笑顔を見せていた。
そして迎えた最終種目の跳馬。宮田が抜けたことでスコア的には最も大きな影響を受ける種目だったが、選手たちは躍動した。
跳馬の得意な岸と牛奥がユルチェンコ2回ひねりで14点前後の高得点を出すと、難度こそ高くないが岡村と中村も持てる力を十分に発揮。団体決勝の進出に必要な点であると読んで設定していた160点を超える162.196でフィニッシュした。
岸は「みんなで繋ぐ演技ができたと思う。こんなにいい試合は初めて」と高揚した口調で言った。チーム全体で見せた、大会前の激震を感じさせない堂々とした演技に対しては、「4人とも明るく真面目なチーム。練習をしっかりと積んで来られていたので、それが結果に繋がったと思う」と胸を張った。そして、演技終了後には豊島リサコーチから「すごく良かった。頑張ってくれてありがとう」とも言われた。