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「スイングスピードを信じろ!」ロッテ・佐藤都志也を“打てる捕手”に変えた村田修一コーチとの二人三脚「男・村田」が授けた“360発の奥義” 

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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photograph byChiba Lotte Marines

posted2024/07/22 11:04

「スイングスピードを信じろ!」ロッテ・佐藤都志也を“打てる捕手”に変えた村田修一コーチとの二人三脚「男・村田」が授けた“360発の奥義”<Number Web> photograph by Chiba Lotte Marines

今シーズン打撃が開花したロッテの佐藤都志也

「じゃあ、どうする?」

 村田コーチはアナリストが出したデータから佐藤都が行うべき打撃スタイルを伝えた。ただ、口で説得するだけではなく数字に基づいて説明することが大事だった。資料の中ではじき出されていた数字は、反対方向への打球速度がチームでも屈指であるということ。これには佐藤都本人にとっても大きな発見であり、「なるほど」と納得した。

 腑に落ちたようにうなずく佐藤都。その表情を村田コーチは見逃さなかった。間髪入れずに「じゃあ、どうする?」と問いかけた。吉井理人監督指揮下のマリーンズは選手の主体性を大事にしている。強制するのではなく導く。さらに金澤岳バッテリーコーチのこんな問いかけも背中を押した。「オマエは捕手としてマスクを被っていて、どっちのタイプのバッターの方が嫌だ?」。こうして佐藤は、自らの意思で反対方向への意識を強める打撃に取り組み出した。

 しかし、最初は試行錯誤だった。打者としてどうしても引っ張って強い打球を打ちたいという思いは残る。甘い球が来ればなおさらだ。そして意識を変えたからといって最初から結果がでるものでもない。逆方向を意識するあまり、思うように強い打球が打てないことも増えた。

「スイングスピードを信じろ」

 2月の実戦練習では思うような結果が生まれず悩んだ。決めた事とはいえ、この道をこのまま進むべきか、元に戻るべきか迷う日々だった。転機は2月下旬に宮崎で組まれていたホークスとの練習試合で訪れた。雨天のため室内練習場で行われ打撃練習の合間に時間が出来た。悩める若者は再び、村田コーチと話し込んだ。村田コーチは打撃を見ていてずっと気になっていたことを、このタイミングで話すことにした。

「変化球待ちをしてストレートが来ることを怖がっていないか。詰まったらどうしようと思っていないか。キャンプの時にデータを見てもらって裏付けされているけど、オマエの反対方向へのスイングは誰よりも速い。自分のスイングスピードを信じろ。(変化球狙いでストレートが来ても)間に合うから」

通算360発の“秘伝”

 そして村田コーチ自身が通算360発を放った現役時代、スイングで大事にしていたイメージを言葉にして伝えた。佐藤都にはこのイメージがピッタリとハマった。打撃の意識をもう一つ変えた瞬間だ。佐藤都が振り返る。

「うまくいかなくて、どうすればいいのかなあと思っていた時だった。コーチの現役時代のイメージを聞いた。振り抜くイメージではなくボールを叩くイメージとのことだった。確かに、その方が逆方向へ変化球待ちでストレートが来ても対応しやすく感じた。ファウルで逃げることもできる」

【次ページ】 神宮で出た理想的な一発

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